第三話 進展 ページ7
そんなそわそわした雰囲気を察したのか、くつくつと偲び笑いを漏らす。
『なっ、何笑ってるんですか…』
志「いや？本当に初めてこういうところ来たんだなぁって。初々しい」
『だっ……、無縁でしたから、こういうところ……』
しどろもどろになりつつも返答を返す。
……ホント、心底愉快だと言う風に笑うな、志麻さんって。
志「…なぁ、ここがどういうところか分かってはいるのか？」
『あ、えっと………、話や悩みを、聞いてくれるところ…、ですよね…？』
不安になりつつもそう言えば、首を縦に振る。
志「そう。俺ら………、俺は客の話を聞くだけ。全ての主導権はそっちだ。寄り添って、親身になって聞くだけ」
そう言えば、頬に手を伸ばす。
彼の手が触れれば、少しだけびくりとしてしまう。
指先がほんのり冷たい。
不思議と、熱っぽい目線から目を逸らせない。
志「ほら、だから………、全部話して？」
『っ……、話す、と言っても……』
手が離れれば、ぱっと顔を逸らす。
『私、ただただ平凡な生活を過ごして来ましたし………』
志「へぇ？」
『学生時代だって、成績も中の上辺りでしたし、就職した今だって普通に働いて……、恋愛事には巻き込まれませんでしたし』
ぽつ、ぽつと言葉を紡ぐ。
『ただ…………』
志「ただ？」
『…私には、何も無いのかな、なんて思ったりもします』
うつ向いていた顔を少しだけ上げる。
…この気持ち、誰かに話したのだってごく少数なのに。
『取り柄もない、突飛したところもない…………、何が私なのかな、なんて』
志「………俺はそう思わないけどな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：饗李 | 作成日時：2020年2月13日 22時
