煉獄槇寿郎�� ページ36
『え・・・』
そんなことを言われるとは思わなかった。
『どういう意味ですか？』
「俺のやっていることには何も意味が無い。」
『私は、選ばれし者なんかではありません。』
「お前がそうでなくて誰がそうだと言う！愚弄しに来たのか。」
しん、とした静けさが耳に堪えた。
縁側から覗く、ゆっくりと揺れる紅葉をしばし眺めた。
『お辛いことがあったようですね。』
やっと口にしたその言葉は、自分でも少し冷たく聞こえた。
口をつぐんでつばを飲み込み、微笑みを作った。
『私は、それを伺いに来たんです。教えていただけませんか。』
「話すことはない。帰れ。」
『槇寿郎さん。貴方のやっていることに意味が無いとは、どういう意味ですか。本気でそう思っていらっしゃるのですか。』
「俺の才能などたかが知れている。杏寿郎とてそれは同じ。どうせすぐ死ぬ。」
ああ、そうか。
結論が見えたとき、Aは全てが腑に落ちた。
『きっと槇寿郎さんは、疲れてしまったんですね。』
槇寿郎は微動だにしない。
『炎柱として長年ご活躍されてきたのだから当たり前です。ずっと気を張っていて、頑張りすぎてしまったのでしょう。』
小さな子供に語りかけるようにAは続けた。
でも、という。
目に映っていた槇寿郎の背中と、紅葉の境界線がぼやけた。
『せめて息子さんたちだけでも、視界に入れて差し上げませんか。・・・お辛いのはわかります。でも、もう少しですから。柱合会議だけでも、出席していただけないでしょうか。』
三日後の柱合会議に来てほしい。
そう頼むA。
槇寿郎からの答えはなかった。
『いつまででもお待ちしています。』
そう言って、Aは立ち上がった。
部屋を出る直前に、もう一度槇寿郎に語りかける。
『・・・私は槇寿郎さんに、柱としてもたくさん気に掛けていただきました。私は槇寿郎さんのこと、今でも尊敬していますよ。』
とんと音を立てて襖が閉まった。
千寿郎が歩いてくる。
何も聞かずに、玄関まで案内してくれた。
「あの、ありがとうございました。その・・・父を、気に掛けてくださって。」
Aは少し動きを止める。
優しい子だ。
あの様子では、槇寿郎は千寿郎にも辛く当たっているだろうに。
『私は槇寿郎さん・・・お父上に、良くしてもらったからね。』
恩返しみたいなもの。
そう言って微笑むと、千寿郎はまだあどけない顔を綻ばせた。
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ひかる(プロフ) - 明日香さん» ありがとうございます！今書いている義勇さんの小説の方を完結させてからになりそうですが、この作品もちゃんと完結させる予定なので今後ともよろしくお願いします！ (3月19日 23時) (
レス) @page41 id: 463449c621 (このIDを非表示/違反報告)
明日香(プロフ) - 面白いです。先が気になります。時透兄弟好きです。 (3月19日 22時) (レス) id: 0b98448e7e (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - 廣岡唯さん» しのぶさん私も愛してます。 (2023年4月6日 17時) (レス) id: 463449c621 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - ぴさん» わあ、ありがとうございます！そう言ってもらえたので、更新します！ (2023年4月6日 17時) (レス) @page11 id: 463449c621 (このIDを非表示/違反報告)
廣岡唯 - 面白い続きが観たい…しのぶさん愛しているぞ (2022年11月3日 11時) (レス) @page10 id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひかる | 作成日時：2022年6月25日 16時
