蔓�� ページ25
「Aさん、お久しぶりです。どうされました？」
しのぶと会ったのは、春の柱合会議以来だ。
Aの姿を見たしのぶは、ぱあっと顔を輝かせる。
落ち着き払っているあたり、Aが怪我をしたとは思っていないらしい。
まあ、その通りではあるのだが・・・
買い被りすぎじゃないかな？
そう、Aは苦笑した。
「しのぶちゃん、私なの。ちょっとね・・・一撃、入れられちゃって。」
眉尻を下げて、真菰が言う。
「真菰ちゃん。どう？見せて。」
真菰は隊服のズボンを巻き上げ、鬼の蔓に巻き付かれた方の足をしのぶに見せた。
一目見て、しのぶはてきぱきと処置をする。
「はい。これで大丈夫。しばらくは安静にして、激しい稽古も控えて。」
処置を終えて、しのぶは言った。
『星屋敷には、帰って大丈夫かな。』
「そうですね。任務にさえ向かわなければ大丈夫です。」
『良かった。ありがとう、しのぶちゃん。』
そう話す二人に、真菰が不満そうに口を尖らせる。
「ほらね、大丈夫だったじゃない。Aちゃんは過保護なんだから。」
真菰に目を向けて、しのぶは言った。
「大丈夫だけど、放っておいていいものじゃないの。Aさんの判断はいつだって的確なのよ。」
『買い被りすぎだよ、しのぶちゃん・・・。』
「Aちゃん、真菰ちゃん？」
診療室の三人に、そう呼ぶ声が聞こえた。
おっとりとした、けれど芯の通った凛とした声が弾んでいる。
ガラリと開いた扉に、しのぶが眉を吊り上げた。
「姉さん。いきなり入ってこないで。それに、姉さんが診てた人はどうなったの？」
「まあまあしのぶ。そんなに怒らないで。あの人もひとまず大丈夫よ。Aちゃんと真菰ちゃんが来てるっていうから、来ちゃった。」
ふふふ、と花のような笑顔で笑うカナエに、しのぶが毒気を抜かれたように微笑む。
『カナエ！久しぶり！』
Aは思わず立ち上がった。
「Aちゃん。来てたなら言ってくれればいいのに。」
カナエは診療室の奥からもう一つ椅子を出してきて、Aに向かい合うように座った。
そういえば、と、Aは尋ねてみる。
『さっき案内してくれたアオイちゃんはどうしたの？』
あぁ、という風に、カナエが瞬きした。
「鬼に両親を殺されちゃったらしくてね。行き場がないから、うちに連れてきたのよ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 104人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひかる(プロフ) - ちーさん» ありがとうございます！励みになります。 (2022年6月2日 18時) (
レス) id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - ooooさん» ありがとうございます！頑張ります！ (2022年6月2日 18時) (レス) @page36 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
oooo - え！！最高すぎます！！これからも頑張ってください！！ (2022年5月29日 10時) (レス) id: 79b285b7ae (このIDを非表示/違反報告)
ちー - ヤバすぎマジで好き！続きまってます！ (2022年5月23日 23時) (レス) @page20 id: 260906d624 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひかる | 作成日時：2022年5月15日 10時
