胡蝶しのぶ�� ページ12
『なんでも、好きなものを頼んでいいよ。私が奢るから。』
「そんな。悪いです。」
カナエは言う。
困ったような笑みを浮かべるカナエに、真菰が言った。
「カナエちゃんこういう時はね、奢ってもらうといいんだよ。Aちゃんはそっちのほうが喜ぶから。」
さすがは継子だ、とAは思った。
一緒に暮らしているうちに、自分の性格が把握されている。
はじめの頃は真菰も、カナエのような表情を浮かべていたものだったが。
「ありがとう。」
そう、口の動きでAは真菰に伝える。
真菰は片目を瞑ってそれに答えた。
カナエは真菰と同じ、栗きんとんを選んだ。
「ここの甘味処ではこれが有名ですから。」
『そうだったんだ。だから、真菰ちゃんも栗きんとんだったの？』
「ううん。でも、おいしそうだなって。」
そうだったのか、とAは肩を落とす。
しかし、Aは自他共に認めるあんみつマニア。
初めて来た甘味処であんみつを頼まないという選択肢はないのである。
ちなみに、「自他」の他は今のところ鎹烏のつゆ羽しかいない。
「あんみつを一口くれるなら、栗きんとんも一口あげるよ。」
だからそんなにがっかりしないで。
真菰が優しくそう言った。
やがて、注文の品が運ばれてくる。
カナエの栗きんとんも同じタイミングで来たことを考えると、やはり栗きんとんは回転が速いのだろう。
「おいしいっ」
そう声を上げたのはカナエだ。
初めて見るカナエのはしゃいだ姿に、Aは笑顔になった。
「この甘味処、実はずっと来たかったんです！」
『そっか。有名なの？』
「人気なんですよ。今日いった薬屋さんの女将さんもここの話をしていました。でも高いから、なかなか来られなくて・・・。」
確かに、ここのお菓子は少し割高かもしれない。
この店が街の一等地にあるということも関係しているのだろう。
周りに座っている人たちを見ても、裕福そうな大人たちばかり。
普通の甘味処に多い若い女の子たちはほとんどいなかった。
「私だけこんなにおいしいものを食べて、しのぶに怒られちゃうかも・・・。」
『お持ち帰りで作ってもらえばいいんじゃない？しのぶちゃんの分も払ってあげる。』
「まあ、いいんですか？」
『もちろん。』
一口食べるごとに、カナエは片手で頬を抑える。
あまりに美味しそうに食べる姿に、Aは真菰に目を向けた。
『ねえねえ、一口、ちょうだい？』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 104人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひかる(プロフ) - ちーさん» ありがとうございます！励みになります。 (2022年6月2日 18時) (
レス) id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる(プロフ) - ooooさん» ありがとうございます！頑張ります！ (2022年6月2日 18時) (レス) @page36 id: 97f5eb0e61 (このIDを非表示/違反報告)
oooo - え！！最高すぎます！！これからも頑張ってください！！ (2022年5月29日 10時) (レス) id: 79b285b7ae (このIDを非表示/違反報告)
ちー - ヤバすぎマジで好き！続きまってます！ (2022年5月23日 23時) (レス) @page20 id: 260906d624 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひかる | 作成日時：2022年5月15日 10時
