己の身を差し出しても ページ14
目を開けると、見慣れない天井。
三年前にもこんなことがあった気がする。
そうだ、チンピラに絡まれた私は助けてもらったんだ。
「おや、目が覚めたかい?」
声の主を見ると、そこには私が会ったことはないが知っている人物が立っていた。
長い白衣を身に纏い、髪は普通の人よりも少し長め。こちらを見る目は怪しく、鋭く輝いてたがそこには優しさが含まれていた。
彼は間違いなく、未来のポートマフィアの首領森鴎外だった。
『助けて下さって、ありがとうございます』
「いいのだよ。何より医者が怪我人を見捨てるなんて、風上にもおけない行為だしねぇ」
言いながら近づくと、思ったよりもゴツゴツとした男の人を感じる手で頭を撫でられた。
あれ、貴方12歳以下の少女が対象じゃありませんでしたっけ?
『あの、お医者さんなんですか?』
「嗚呼、そうだよ。
君の怪我の治療をしたのも私だ。それがどうかしたかい?」
目が合う。まるでこちらの考えていることまで見透かされているようで何だか落ち着かない。
『俺は、母の為に医者を探してここまで来ました。
対価は払います、母を治療して下さい。』
ベッドに座りながら、上半身を下げて彼に頼みこんだ。彼は私の事を見ているのか、下げている後頭部に視線を感じる。
「顔を上げたまえ。
服装からして、貧民街に住んでいるだろう君は今金なんて持っていないだろう。それ以外のもので、私を頷かせる対価はあるのかい?」
顔を上げた私を見る瞳はさっきとは違って、森医師としての顔ではなくポートマフィアの首領である彼の顔になっていた。
ここで間違えれば、きっと母の命は救われない。
ここが勝負どころだ。
私はしっかりと目を、彼に合わせた。
『確かに俺にまだ金は払えません。
だから、代金を払い終えるまで俺は貴方の道具となります』
「君にそんな価値はあるのかい?」
『自分ではあると自負しています』
「その理由は?」
『俺は異能力者です』
変わらず私を見つめていた瞳が微かに見開かれた。
彼は少しだけ考えた様子をみせると、此方をちらりと一瞥して立ち上がる。
「いいだろう。
代金を支払うまでの私への君の従属が対価だ。
金額は病状を見てから決める。患者は何処だい?」
私はこの瞬間、森鴎外の所有物となった。
自分の選択に、後悔は微塵もない。
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夜幸(プロフ) - 霊夢どうふさん» 応援ありがとうございます!不定期ですが、そろそろ芥川さん出るので楽しみにしていてください!! (2019年1月28日 17時) (レス) id: 37f394c4d7 (このIDを非表示/違反報告)
霊夢どうふ - やつがれメイン…神か、神なのか好きですぅぅぅぅこれからも更新、頑張って下さい! (2019年1月27日 11時) (レス) id: 8add41b466 (このIDを非表示/違反報告)
猫夜桜((シラキ(プロフ) - 1つのベッドに2人で寝るだと………?いい事じゃないか(鼻血)←あとホラー映画見てた時は中也くんは横にいて腕に抱きついてきたとか…w(ニヤニヤ) (2019年1月20日 4時) (レス) id: 4588ab3ba5 (このIDを非表示/違反報告)
夜幸(プロフ) - みこさん» 私の小説が原作を知るきっかけとなってとても嬉しいです。原作はこれ以上面白いのでぜひとも読んでみてください!芥川さんは頑張ってこの話中に出したいです…もう少しお待ち下さい! (2019年1月16日 23時) (レス) id: 37f394c4d7 (このIDを非表示/違反報告)
みこ - 文ストの知識皆無でしたが、この作品を読んで興味が湧きました。そして芥川さんがカッコいいですなんやこれ (2019年1月15日 0時) (レス) id: 3d83174dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜幸 | 作成日時:2018年12月28日 16時