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「A！」
『やぁウルド。無事にリーグを確保してくれたんだね』
テオエラを連れてウルド達の元へ戻ると、真っ先にウルドが駆け付けた。そして私の胸元が血で汚れていることに気付くと、テオエラを睨み付けた。
「…貴様が彼女を傷付けたのか」
今にも飛び掛かりそうに低い声音で問いかけるウルドの手首を掴む。
『テオエラは悪くないんだ。責めないであげてほしい。元は私がこの子を置いていったから』
「だからとお前を傷付けていい理由にはならない」
『そんなに怒らないで。君との約束を破ったのは申し訳ないと思うよ』
「そう思うならなぜ私との約束を守らない」
『…ごめん』
「私が、お前に傷ついて欲しくないと思っているのは知っているだろう。たとえすぐに治るとしても、愛する女が傷付いて喜ぶと思うのか」
『そうだね。優しい君はきっと嫌がるだろう』
「っ本当に分かっているのか！？」
淡々と返す私に、らしくもなくウルドは声を張り上げる。
『ウルド。今は戦時中だ。いくら私が強いと言っても限界はある。それにこの身体では、彼の相手は手こずってしまうんだ』
「っ」
『死ぬつもりは無論ない。でも、傷一つ作らないのは無理がある』
「…」
『だから…、君に私を守ってほしい』
「！」
私の言葉にウルドは瞳を見開く。
『どれだけ気を張っていても、強くても、賢しい奴に足を掬われるかもしれないからね。私の背中を預けられるのは君しかいないんだ、ウルド』
「……はぁ」
深い溜め息を吐いたウルドが私の腕を引いて抱き締める。肩口に顔を埋めて額を擦り付けるウルドの頭をゆったりと撫でる。
『心配かけて、ごめんねウルド』
「まったくだ」
『ははは』
よしよし、と撫でる。
「いちゃつくなよー」
『嫉妬は見苦しいよ、リーグ』
「いやどう考えても嫉妬じゃないでしょ。呆れてるの」
『はは』
「というか千年前より重症化してない？」
『そうかもね。可愛いでしょ？』
「可愛くない」
「男に可愛いはダメでしょ」
『あはは』
不貞腐れたような表情で顔を上げたウルドの頬にキスをする。
『ロシアに帰ったらうんと相手をしてあげるから。今は我慢してよ』
「千年は屋敷の中だぞ」
『えー。うそー』
長いなぁ、と笑う。
だがまぁウルドの好きにさせよう。本当に拗らせると怖いからね。外出禁止くらいなんてことはない。
「誰にも会わさないからな」
『…わぁ…』
それは寂しいな。満足するなら仕方ないけれど。
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作者名：レイ | 作成日時：2022年1月1日 23時
