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『ちょっと行ってくる。ここお願い』
「はーい」
ルクの側を離れ、優達に近付けば彼は口を開いた。
「おいA!これどうなってんだよ!」
『見ての通りロシアから大勢貴族が来てるんだよ。君達、馬鹿な真似はしないでね。とりあえず大人しくしておいてくれるかな?今は逃げられないからね』
「あの…優さんのことは…」
『別に話してない。でも君達が目立つことをしたら聞かれるから、くれぐれも、大人しく、目立たないように…大人しくしててって話だよ』
「いま二回言った…」
いいね?と言って主に優を見ると、不服そうな表情で頷く。それを確認すると、地面を蹴ってその場を後にした。
『みーつけた』
「「「!」」」
剣を振るう。それは立ち去ろうとしていたリーグの髪を数本斬り落としただけで避けられてしまった。
私を見た彼は戯けた様子で笑う。
「ありゃりゃ。フェリドの相手をしていたら厄介なお姉様が来ちゃったなぁ」
『ハァイ。君の大好きなお姉さまだよー』
「いま、君の相手をする暇はないんだけどなぁ」
『ウルドが来ちゃうから?』
「流石に君とウルドの二人の相手はちょっとね」
『負けちゃう?』
「負けちゃうよ〜僕はか弱いんだ」
『あは。本当にか弱い人はそんなこと言わないよ、リーグ』
なんて和やかに話しながらも私達は凄まじい攻防を繰り広げている。彼は鎖を使い、私の剣をいなす。私は剣を使い、無尽蔵に繰り出される彼の鎖を斬り落とす。
さて、私に彼を捕らえられるのか。
「はは。まぁでも、本当に君の相手をする暇はないんだよね」
『!』
リーグが私の剣を強く弾くと懐に入り込んだ。口元が動き、弧を描く。
振り翳される、彼の腕を避けて後方へ飛ぶ。それを追い掛けるように無数の鎖が眼前に迫った。
『…剣よ、血を吸いなさい』
ーガガガガガガッ
身体能力を向上させて、鎖を斬り落とす。
その数秒が稼げたら良かったのだろう。リーグは既に背中を向けて走り出していた。
…今から追ったところで間に合わないな。
そう判断して追うことを諦める。が、剣を振るう。
ードォォォォォン
それは空気を裂き、地面を抉り、建物を薙ぎ倒した。
遠くで、うわー、と言う声が聞こえたがどうせ彼は避けているのだろう。何がうわー、なのか。
カチン、と剣を鞘に仕舞う。
『…リーグ…』
息を吐いて横に視線をずらした。そこにはクルルの首根っこを掴んだウルドと、大量の血の匂いを漂わせるレストの姿。
『やぁ、ウルド』
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作者名:レイ | 作成日時:2020年8月4日 17時