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「ぁ…っ」
ジュルルルッと勢い良く血を啜る。
三ヶ月振りの血だ。長いこと飲んでいなかった分、渇きはやはり酷い。
血が欲しい。血が。
その結果一気に血を啜ってしまい、その人間は死んでしまった。
唇についた血をぺろりと舌で拭う。
『…まだ足りないなぁ…』
ちらり、と気配がする方を見る。
「っひ、」
少女が尻餅をつきながらこちらを見ていた。ゆったりとした足取りで彼女に近付き、見下ろす。
「…ゃ…っやだ…!」
『ごめんね。でも、お腹が空いててさ。大丈夫。殺さないから』
と、牙を覗かせながら優しく笑って少女の首筋へと喰らい付いた。
「ぁ…っあ…」
吸血からくる快楽が彼女を襲っているのだろう。恍惚とした声が聞こえる。だが同時に屈辱的だろう。そんなことを思わされてしまって。
今度は間違って死なせないように、ゆっくりと血を啜っていく。
…ああ、渇きが癒されていく。でも、満たされない。
ウルドの血が欲しい。あの芳醇で濃厚な、そして甘美な麻薬のようなそれを。
『…あれ、』
急激に血が不味くなった。
不思議に思って少女を見れば、彼女はもう死んでいた。
無意識のうちに大量に血を啜ってしまっていたらしい。殺すつもりはなかったのだが…やはり、血に飢えた状態だと難しいな。
そう考えながら立ち上がり、バスが停まってある方向を見る。
いまは、サービスエリアで優たちがトイレ休憩をしているのだ。
だが、そろそろ戻った方がいいだろう。
ダンッと地面を蹴り付けてそちらへ向かう。少ししてバスの外に立つフェリド達が見えた。
「あ。おかえりなさぁーい」
「お帰りなさいA様」
『うん、ただいま』
二人の前に降り立つと笑みを向ける。
「お腹いっぱいになりましたか?」
『まぁね』
「わさわざ探しに行かなくても、お弁当はいっぱい乗ってたのに〜」
と、中にいる子たちにも聞こえるように言ったフェリドに苦笑する。
『間違って吸い殺したらダメでしょ?結構飢えてたからさ』
「まぁそうですねぇ。…何人吸い殺しました?」
にや…といやらしい笑みと共に問い掛けるフェリドに肩を竦める。
『二人。殺すつもりはなかったんだけど…飢えた状態だと我慢するのは難しいよね』
「まぁ三ヶ月飲んでなかったですもんねぇ」
『そうそう』
私の言葉に、人間たちが殺気立ったのを感じ取る。それをフェリドも分かっているだろう。彼は面白半分で聞かせたのだ。相変わらずのクズだなぁ。
「じゃあ再出発だ〜」
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作者名:レイ | 作成日時:2020年8月4日 17時