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ー生きろ、A。おまえが世界を拒むのなら私がおまえの世界になる。生きる意味がないのなら私がなる。だから、生きることを拒むな。それを諦めるな。それから逃げるな。それでも苦しいのならただ、私の側にいろ。私がおまえの苦しみも、辛さも、喜びも、幸せも…全てを受け止めてやる。A…おまえは、生きていいんだ。
その時を、今尚色褪せることなく覚えている。心が震えたその瞬間を。生まれて初めて、この世界で生きていていいのだと…生きようと思えたその瞬間を。
その時から私の中で、彼の存在が大きくなっていた。
『…』
「…そろそろ着きますよ」
フェリドのと言葉に、意識を戻した。
そして視線をそちらに向ける。そこにはクローリーが人間の子供達と遊んでいた。彼等はまるで相手になっていない。
フェリドはそちらに向かって車を走らせ、ミカと優の前で停めた。
「やぁやぁお二人さん。危ない吸血鬼に襲われてると聞いて飛んできたよ。さぁ乗って。僕が助けてあげよう！」
『…』
向かわせたの君だけどね。
とは言わない。言ったところで意味がないから。
茶番を繰り広げるフェリドに溜め息を吐いてから車を降り、クローリーの側に行く。
『楽しかった？』
「うーん。いや、別に…ですかね。彼等は弱いですし」
それに、あははと笑った。
クローリーが弱いと言うくらいだから、私が出たら大変なことになっていたかもしれない。一応、第二位始祖だからね。
「あ、呼ばれたので行きますね」
『うん。頑張って』
ありがとうございます、と笑ってフェリドへ助太刀しに行くクローリーを見送る。
ぼう、としながら空を見上げて、ウルドに怒られるかなぁ…とぼんやり考える。
セラフに関わっちゃったし、瞳も彼等特有の黄金色のままだ。これはもう治らないだろう。感覚も鋭いままだ。今まで以上に。
「A様終わりましたよ〜」
『…ああ、ほんと？思ってたより早かったね』
す、と視線を向ければ人間の子供達はビクリと身体を揺らした。それに思わず苦笑する。
「いやー、優ちゃんとミカちゃんが仲間になってくれるって言ってくれて。僕嬉しくて泣いちゃいそうです〜」
『へー。面白そうだから泣いてよ。レアだしね』
「無理ですけど」
『はは。何それ』
と、笑いながらフェリドを見てミカと優に近付いて彼等を見下ろす。
周りが警戒したように身体に力を込めたのを感じたが無視した。
セラフの鼓動はいまは感じられないな…これは、鬼の気配かな？
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作者名：レイ | 作成日時：2020年8月4日 17時
