夜に恋う３ (ページ31)

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「…というわけなんだよー」

あの後フェリドに連れられて屋敷を出ると赤いオープンカーの後部座席に乗り、海岸沿いを走るフェリドの百夜家惨殺事件の昔語りに耳を傾けていたわけなのだが。
しかしまぁ、エゲツないことをする子だと改めて思った。
幼気な子供に希望をチラつかせて、それを潰すだけでは飽き足らず、絶望した顔を見るのが好きだなんて。とんだクズサイコパス野郎だろう。
それなのに、

「あの～フェリド君」

「なに？」

「その話だと君、優とミカって子の家族を皆殺しにしたんだよね？」

「したね～。あれは楽しかった♪」

楽しそうに舌舐めずりしたフェリドとは逆に、クローリーは頬を引攣らせながら言葉を続ける。

「それで今から僕らは何しに行くんだっけ？」

「優ちゃんとミカちゃんの仲間になりに行くのさ」

サイドミラー越しにクローリーと視線が合う。
…うん、君の考えは間違ってないよ。
コクリと頷いた。

「…無理じゃない？」

「なんで？」

「いや常識的に考えてさ」

「常識？そんなものに囚われてちゃダメだぞクローリー君」

あー、始まった。
とぼんやり思いながら空を見上げる。青い空。眩しい太陽。快晴だ。

「かつての敵同士が仲間になる！一番熱い展開じゃないか～」

『マンガの読み過ぎだよフェリド。現実だと確実に攻撃されるよ』

「そこは僕の巧みな話術とカリスマ性でカバーするよ～ん」

カリスマ…とクローリーと同時に呟いた。
まぁどうでもいいか、と思い視線を真っ赤な海に逸らす。
今日、ウルド達は日本に到着する。貴族を大勢引き連れて。彼等でサングィネムを取り返すのだろう。で、人間組織も滅ぼす。…で、クルルに罰を与える。
日光拷問辺りだろうか。あれエゲツないから嫌いなんだけどなぁ。というか、私も罰を受けるのだろうか。…日光拷問？痛そうだからヤダなぁ…。

『…ん？』

視線を感じ、そちらを見ればスコープ越しに視線が合った。にま、と意地悪く笑えば驚いた表情が見て取れる。遅れてクローリーも声を上げた。

「あ～いま見られてたね。逃げるよ」

「ちょっと逃がさないでよー」

「はっ。まさか僕に走っていけと？」

「僕運転してるし。A様の手を煩わせるわけにはいかないだろ？」

「運転代わるよ」

「いいから早く行けよ」

笑顔と謎の威圧感を出してクローリーに命令するフェリド。それにクローリーは溜め息を吐いて立ち上がり経路を調べる。
そして、車を蹴りつけて崖の上へと消えていった。