夜に恋う３ (ページ4)

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『まぁそれはどうでも良いでしょ』

壁から背中を離すと、コツコツとヒールを鳴らしながら彼らに近付く。

『君たちは指揮官クラスだ。さっきの人間たちよりも、きっと良い情報を持ってるだろうから…大人しく捕まってくれるかな？』

「ぬかせ」

『そう。残念だ。弱い子供を甚振るのは好きじゃないんだけど』

わざとらしく肩を竦めた私に向かって剣を振り翳すグレン。その切っ先を見詰める。

ーギィン

「はーい、A様に手を出さないように」

『ああ…ありがとう、クローリー』

その剣が届く前にクローリーが止める。

「うぉぉおおぉお！！」

グレンは次々と休む間も無く剣を振るう。
彼の剣術は決して悪くない。むしろ技術がある。だがしかし、貴族の吸血鬼にとっては大した脅威でない。
余裕の表情でそれを受け流すクローリーにホーンが口を開いた。

「クローリー様、私たちも…！！」

「いらない。この子程度どうとでも…」

「よそ見すんじゃ…ねぇぇえ！！」

よそ見をしたクローリーに重い斬撃が繰り出された。
それでも彼はそれを受け止め、グレンを振り払う。

「衝撃を吸収しろ！！真昼ノ夜！！」

天井に飛ばされたグレンが叫ぶ。

「深夜！！」

深夜、と呼ばれた白髪の青年が銃をった。だがしかしそれはさっき止められていた。それには何の意味も持たない攻撃だと分かってるはずだ。だからこれは、ただの囮に過ぎない。

『あらら』

案の定、土煙が晴れたそこに二人はいなかった。

「A様、分かってて見逃したでしょ」

『あはは。さぁ、追い掛けようかクローリー』

「もぉー。僕走るの嫌いなんですよねぇ」

『たまには走らないとそのムキムキの筋肉が落ちるよ』

「はは。落ちないでしょ」

と、つまらない雑談をしながらもクローリーの腕が壁を突き破る。壁の向こうで骨が軋む音が聞こえ、放せコラ！と言うグレンの声も聞こえ、クローリーは腕を引き、もう一度壁を壊して廊下に出た。

「あ。もうあんなに離れてる。逃げないでよー。走るの嫌いなんだ」

「なら追いかけてくんなよ！！」

なんて我儘な子だ。
深夜が銃弾をこちらに放ち、それをクローリーが避ける。

「はは。襲ってきたのは自分たちのくせに追いかけるなとか。人間は相変わらずわがままだなぁ～」

そう言うと同時にクローリーが地面を蹴り付け、一瞬でグレン達の元へと距離を詰め剣を振り翳す。
それを見たグレンが深夜を庇うように咄嗟に刀で受け止めたが肩を斬られた。