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ふ…と意識が浮上していき、目蓋を上げる。
『…』
以前より更に、感覚が鋭くなっている。そして、酷く身体が軽い。
ふと床に視線を下ろせば。
『うわぁ』
散らばっている白い羽根。
もしかしなくても、私の背中に生えていたのだろう。
いまは生えていないだろうか、と背中に手をやればそこは空を切った。思わず安堵する。
『…』
セオエルの記憶と力と、想いが自分の中に溶け込んだ。その結果、欠けていたピースが漸く嵌まったような、清々しい気分だった。
『…セオエル…』
ほんのりと胸の奥が温かくなったような気がした。
ふ、と笑うと立ち上がり身体を伸ばす。
『さて…私はどれくらい眠っていたのか』
ガチャリとドアを開けて部屋を出る。
屋敷は静かだ。しかし、漂う血の香りに惹き寄せられるようにしてそちらに向かう。
そのドアを開けて中を覗き込み、そこに居たのは。
「…Aか」
『クルル』
壁に埋め込まれたクルルだった。
彼女は憔悴したような、しかし力強い瞳で私を見据える。
『…フェリドも悪趣味だな…こんな拘束の仕方なんて』
天井から下がる鎖を見て呟いた。
「あいつの悪趣味はいつものことでしょう」
『まぁね』
カツカツと音を鳴らしてクルルの目の前まで来ると、彼女の頬に手を添える。
「なに?」
『いや…やっぱり心が痛むと思ってね』
「なら逃がしてくれないかしら」
クルルの言葉に困ったような苦笑を浮かべると、彼女は諦めたように小さく息を吐く。
いくらクルルの頼みでもそれは出来ないから。
『クルル』
「なに?」
『君はアレを使って何をしようとしたの?』
「…」
そう聞けば、彼女は口を噤んだ。
『何をしようとしているのか聞かせてくれないと、私は君の減刑を考えることが出来ない』
「…貴女に禁忌を侵す勇気があるの?」
『あは。私はそもそも異端だからねぇ。今更、禁忌を恐れるとでも?』
飄々とした声音でそう言えば、クルルは観察するような目付きで私を上から下まで見た。
「貴女は、いったい何?気配が変わった。…あの男に近いものになってる」
『ああほんと?ならウルドにもバレるなぁ』
「…貴女は本当に吸血鬼なの?」
それに、口元に弧を描く。
『勿論。私は正真正銘吸血鬼だよ』
「けど、」
『ただ、ちょっと混ざってるんだ』
「混ざってる?」
『そう』
私。セオエル。天使。吸血鬼。私も中々ぐちゃぐちゃだよねぇ。
「…どういうこと?」
『ふふ。知りたい?』
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作者名:レイ | 作成日時:2020年8月4日 17時