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彼女はやはり、美しく微笑む。
「Aが漸く私のことを見てくれた。凄く嬉しいんだよ」
『…』
「私は貴女の中で、ずっと待っていた。Aが私と対話してくれる時を…ずっとずっと、待ち焦がれていた」
『…何故？』
「私たちは元は一つ。だから寂しかったんだ。Aは頑なに私のことを認めようとはしなかったから」
私の中に誰かがいることはずっと前から知っていた。でもそれに触れようとは思わなかった。私が私でいなくなってしまうような気がして…だから無意識のうちにそれを押さえ込んで、仕舞い込んでいた。
「けれど終わりのセラフが出て来たから、貴女は否応なしに私に向き合わなければいけなくなった。そうでなければ《セオエル》の力が貴女を勝手に蝕んで、変えてしまうから」
『うん…そうだね』
「…さあ、A。私《セオエル》を受け入れる覚悟は出来た？」
透き通った黄金色の瞳が静かに私を見据える。
彼女を見ると、何故か懐かしさのようなものが湧き上がってくる。
『…君とはもう、話せないんだね』
「うん、そう。私は貴女と一つになるから。貴女の魂と融け合うから」
『…正直、残念だよ』
「どうして？」
『セオエルの存在はずっと感じていた。生まれた時からずっと。だから、』
そこで、ふわりと何か温かいものに包み込まれる。
視界には真っ白な羽根が舞った。
「私はいつだってAの側にいる。貴女の力となり、剣となり、盾となる。貴女が見て、聞いて、感じたものを私もAの中で共有するの」
『…うん』
「大事な大事なA。私の愛しい半身。貴女の中で私は永遠に生き続けるよ」
『…そうだね』
少し身体を離し、セオエルは私に微笑みかける。
「…ああ…やっと私たち…一つに戻れるね」
嬉しそうな彼女。
同じ顔立ちの、彼女の柔らかな白銀の髪に指を通して梳かして、そのまま体温の宿る頬に触れて。
「さぁ…A。貴女の望みのために。そして、私の望みのために。…私《セオエル》を受け入れて…？」
柔らかく温かな首筋に、牙をブツリと穿った。
そして彼女を喰らい尽くすように、それを吸い上げる。
すると自分の中に濁流のように流れ込んでくる《セオエル》の記憶と、力。
「ああ、ああ…漸く私は、…貴女の…＿＿＿＿＿」
そう、セオエルが嬉しそうに呟いた。
その言葉を聞きながら、私は自分を襲う激流に身を任せるように瞳を伏せてそれを受け入れる。
『お帰り。私の…＿＿＿＿』
そして、私は。
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作者名：レイ | 作成日時：2020年8月4日 17時
