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『はぁ…疲れたなぁ』
慣れないことはするもんじゃない。
クロスタイを解き、上着もポイっと床に投げ捨てるとベッドにダイブした。
ここは大阪にあるフェリドの屋敷だ。
あの後、適当に戦いながらも大阪まで撤退した。人間たちも今のところ、ここまで追ってくるつもりはないらしい。
『ああ…熱い』
身体が何かに侵食されているみたいだ。じわりじわりと…でも確実に何かが私を侵そうとしている。
名古屋空港でセラフが結界を張ってくれ、尚且つ二体も出て来てくれたおかけだろう。私の中のセラフ因子が活動を活発にしている。
『困るよなぁ』
私は、セラフの力を使いこなせていない。そもそもそれは真逆の力なのだ。均衡を崩せばどうなるのか。
身体が重い。何かに引っ張られるように意識が微睡んでいく。
『…____』
とぷん、とそれは沈んだ。
_____
____
目蓋を上げる。
そこには見渡す限り、純白の花々が咲き誇っていた。
『…はて。ここはどこだろう』
知らない場所だ。でも、知っている場所でもある。
私の深い深い深層心理に刻まれた場所。きっとそこは《私》にとって思い入れのある場所なのだろう。
周りを見渡していると、さく…と草を踏み鳴らす音がして、そちらを見やる。
「こちらへようこそ」
そこには、私とよく似た面立ちの女が立っていた。
『…んー。君が《セオエル》?』
「そうだよ。流石に分かるよね」
私とは対称的な白銀の髪を揺らして、黄金色の瞳を緩やかに細めて笑うセオエル。その背中には三対の純白の翼が生えていた。
『…どうして私はここに?』
「セラフに会ったでしょう?それに触発されちゃって私の力が強くなったんだ」
『困るなぁ…私を乗っ取る気なの?』
セオエルは笑う。
『…既に死んだ分際で、私に噛みつこうって?』
「あはは。怖い顔だね」
『…』
ぐ、と眉根を寄せた私に、セオエルはやはり微笑む。
「心配しなくとも、私は貴女を侵す気はないよ」
『どうだか』
「本当だよ。…だって、私は貴女だから」
そう言ってセオエルはそこに座り込んだ。その隣を、ぽんぽんと叩いて座るよう促してくる。少し躊躇ってから、間を開けて座った。
「私という存在は、《彼》を庇ったことで死んだ。そして堕とされたその魂と力は貴女に継がれた」
『…』
「私はもう、消えた存在。今を生きてる貴女を害する気なんてないよ」
微笑むセオエルは、儚げだった。
『…じゃあ何故いま、出てきたの?』
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作者名:レイ | 作成日時:2020年8月4日 17時