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「そんなわけで〜上位始祖の皆様も人間を始末しに日本へやってくると思いますが、その前に一度、私たちが日本を捨てる許可をいただけたら、と。逃げていいなら、裏切り者のクルル・ツェペシを皆様へお届けしましょう」

「………日本……」


と、呟く。
Aは恐らく事前にその情報を得ていたのだろう。クルルが関わっていることも。
だから自らが出て行った。
だが、終わりのセラフの力は彼女に何か悪影響は与えないのだろうか。
彼女は…終わりのセラフのものではないとはいえ、セラフ因子を持ち、セラフの魂を、セラフの力を持っている…いわば生まれ変わりなのだとAに聞いた。


ーカッ


そこで靴音が響く。
そちらに視線を向けた。


『やぁ、ウルド』


気怠げにシャツの襟元を寛げながら私に微笑みかけるAがそこにはいた。
…だが、その瞳はいつもの美しい深紅ではなく…真祖と同じ黄金色だった。


「…A」

『遅れてごめんね。ちょっと人間たちやらセラフやらの相手をしていてさ』


珍しく服に少し埃を被っている。
どこか疲れたような表情をしている彼女をジッと見つめれば、Aは苦笑して肩を竦めた。


『存外、終わりのセラフがしつこくて』

「怪我は」

『ないよ』


はぁ、と小さく息を吐いたAがチラリとクルルを見て瞳を細める。


「A様。人間どもが《終わりのセラフ》の兵器化に成功したと…」

『ああ、だろうね。今も一体サングィネムに来てるよ。…もう五月蝿いったらさぁ』

「殺せるか?」

『出来るだろうけど、ちょっとリスクがね』


そこでAがどこかに視線を向けて、鬱陶しそうな表情を浮かべた。


『ああもう…五月蝿いなぁ…』

「…大丈夫か?」

『平気だよ。触発はされちゃったけどね…まぁその内収まると思う』


それは、彼女の中のセラフ因子について言っているのだろう。やはり、悪影響を及ぼしていたのだ。
…だからあれほど無茶はするなと言っていたのに。…次に会ったらしっかり仕置きしなければな。
と、考えていたらAが身体をぶるりと震わせていた。


『…なんか悪寒が』

「それで、どうするんだ」

『出来ればサングィネムを一旦捨てたいんだけど。…クルルのこともあるし、セラフのこともあるしね』

「…」

『きっと、君たちが日本に来てくれるんだろうと思ってるんだけど…どうかな?』


じ、と私を見つめてくる。
私の助力が必要なのだろう。その時が来ているのだ。一歩を踏み出さねばならない時が。

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作者名:レイ | 作成日時:2020年8月4日 17時

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