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嘲るようにそう言った私を、塩の王はジッと見つめてくる。どうやら本当に分からないらしい。
『まぁ、忘れてしまうのも無理はないか』
「おまえはいったい何だ」
『かつては…そう、かつては君と同じだったんだよ』
「！」
ああ。身体が熱い。身体を熱が駆け巡っている。元々鋭い感性を持つ私の身体が更に研ぎ澄まされていっているのをはっきり感じた。
セラフに触発されてしまったのだろう。正直言って…面倒だ。
『私は、堕ちた存在だ。《彼》を庇い、追放された』
「！まさか…」
何かに気付いたように瞠目した彼に向けて笑みを浮かべる。
「まさか…貴女は…《セオエル》様…？」
ああ、懐かしい呼び名だ。私の中のソレが、歓喜に震えたのを感じた。
『懐かしいね。その名を呼ばれるのは』
《セオエル》ーーーそれは、私がかつてセラフであった頃の名前だ。私には、そうであった時の記憶が断片的に残っている。そして、その力も受け継いだ。使いこなせてはいないが。
「まさかこんなところに……それも、吸血鬼に…？」
『彼に堕とされて、人間となり、そして吸血鬼になったんだ』
「…嘆願に行くべきだ」
『はは。何の為に？私は今の生を気に入ってるんだよね』
「貴女は本来そこにいるべき方ではない！！」
『へー。そう？でも私、そちらに未練なんてないんだ』
「先導者たる《始まりのセラフ》である貴女が、欲深い人間どもが蔓延るこの世界にいれば利用されてしまう！！」
『実際、君は利用されているからね』
と、嘲笑を浮かべる。
『でも…君と一緒にしないでほしいなぁ』
人間たちに良いように使われているセラフなんかと、同列に考えられるなんて心外だ。
『君はいま、ここでは邪魔なんだよ。…だからさ』
ふ、と微笑む。
『おまえは…《消えろ》』
ダンッと地面を蹴り付けると一瞬で彼の目の前まで行く。そして剣を振り翳した。
「っく、」
止められる。だが追撃の手を休めない。
『君たちが世界を滅ぼしてくれたおかげで私たちは大忙しだよ。興味もなかったことまでさせられてさ』
「人間が禁忌に触れたからだ！！」
『だから人間を滅ぼすって？考え方が単純過ぎるよ』
ガッ、と塩の王を蹴り付けると吹っ飛んでいく。起き上がろうとした彼の胸元を足で踏み付け、見下ろす。
『まったく…君たちが出て来るから、私の中のセラフ因子が騒ついている。余計な事ばかりするね』
凍てついた瞳で塩の王を見据えると、彼は少し怯んだ。
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作者名：レイ | 作成日時：2020年8月4日 17時
