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「俺たちは…俺たちは…！家族じゃなかったのかよ！？」
遠くで優の悲痛な叫び声が聞こえる。
鬼に乗っ取られたグレンに、その声は響いたのか。
泣いている彼に、優が希望を見出したような表情になる。
「グレン！！」
が、しかし。
グレンは無情にも優に刀を振り下ろし、それは肩深くまで斬り裂いた。あれではもう戦えないだろう。ここを離脱するべきだ。
『…』
頭上の天使に視線を戻す。それは何かを喚び出そうとしていた。背中から溢れ出たそれは、吸血鬼も人間も襲う。
その攻撃から逃れるように地面を蹴って後退すると、ミカと優に近付くクルルの姿が目に入った。
『さて…優。家族か、仲間か。＿＿＿＿君はどちらを護りたい？』
そう呟くと同時に火柱が上がった。
人間たちにとっては予想外の事態なのか、超俺様君が指示を出す。
「葵！！あの《終わりのセラフ》を潰せ！！」
セラフの依代である少女の背後にいる悪魔アバドンが、火柱に向けて攻撃を放つ。
…だが、
「…終わりだ。全部。禁忌を犯した人間どもは、みなみなみな…塩の柱となれ」
優ー第二ラッパ塩の王がアバドンの攻撃を塩で出来た壁を作り出し、相殺する。
その壁の上に降り立つと、彼を見下ろして口を開く。
『やぁ、塩の王』
「…なんだ、貴様は」
『酷いな…私のことを忘れてしまったの？』
そう言う私を、訝しげな表情で見上げる塩の王にニコリと笑みを向け、一度目蓋を閉じる。
『…かつては、《私》を慕っていただろうに』
そして再び目蓋をあげると、彼は瞠目した。
「何故…吸血鬼が、その瞳を…」
『塩の王。まずはあの、アバドンを倒そう』
そう言って後ろを振り返る。アバドンは再びこちらに攻撃しようとしていた。
「…」
塩の王は無言で槍を形成すると、駆け出す。その横に並んで走っていく。
『ーーー剣よ、私の血を吸え』
走りながら剣に血を吸わせる。
そして彼と同時にアバドンへと斬撃を繰り出せば、それはアバドンを真っ二つにし、呆気なく沈黙させた。
『…つまらないな』
所詮は下位の天使か。序列的にも、塩の王には勝てるわけもないのだが…それでも呆気なさすぎるだろう。
「…終わりだ。人が生み出す欲望の連鎖は、今日、すべて塩の柱に変わる」
『君は本当に人間が嫌いだね』
と、言えば彼は私に視線を向けた。
「…おまえはいったい何者だ？何故、天界の者しか持たない瞳を持っている？」
『少しはその頭を使って考えたらどうなのかな？』
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作者名：レイ | 作成日時：2020年8月4日 17時
