夜に恋う３ (ページ15)

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『…』

そこは混沌だった。
人間が人間を襲っている。
否、あれは恐らく…生贄にされているのだ。

『…人間の欲望は恐ろしいな…』

思わずポツリと呟いた。
がしかし、私も先程吸血鬼を殺したから他人のことは言えないのかもしれない。

「愚かな人間どもめ！！我ら吸血鬼に手を出したことを後悔させてやる！！人間どもを皆殺しにしろ！！」

一人の吸血鬼が叫ぶ。

「怯えるな！！家畜は卒業だ！！今日、俺たち人間は吸血鬼を克服する！！」

それに対抗するように、あの時の超俺様君も叫んだ。

「さぁ、実験が完成するまでの時間を稼ぐぞ！！人類の未来を切り開けぇぇぇぇぇぇぇ！！」

実験、と彼は言った。
ということはここは実験場だ。それを完成させる為の実験が、今日、ここで行われるのだ。
吸血鬼と人間が入り乱れ、戦闘を開始する。
その中には、ミカや優もいた。
そのミカの瞳は赤い。つまり、人間の血を飲んで完全な吸血鬼になったということだ。

『…さて…』

つい、と視線を逸らす。
あのバンから気配を感じる。それは、かつての＿＿＿＿

「おまえ…無事だったのか！グレン！！」

と、そこで思考がそちらに向かう。
拘束されていたはずのグレンが優の方へと向かっていた。その姿を見た優達の表情が明るくなり、グレンに駆け寄る。

ーガキィィィン

彼らの驚いたような表情が見て取れた。
当然だ。刀を向けられたのだから。間一髪、ミカが受け止めていたが。

「グレン！！始めるぞ！！」

超俺様君が叫ぶとグレンは刀を上げ、それにバンから出ている鎖が巻き付いた。

「生贄の人間と、鬼と、始祖の血を吸え…《終わりのセラフ》」

そしてグレンは吸血鬼人間見境なく襲い出す。その血を鎖が吸っている。

「来るぞ葵！！禁忌を犯した人間に天罰が来る！！その力をコントロールしろ！！天使を暴走させるな！！拘束具を…！！」

バンから何かが飛び出す。

「て…天使…」

そう、誰かが呟いた。
あながち間違いでもない。そこにいるのは、紛れもなく天使なのだから。

『…』

二対の翼をはためかせ、こちらを見下ろす少女。

「《醜い人間どもよ。滅亡しろ》」

そう言い、目の前のラッパを鳴らす。
ああ、頭が痛い。

「ああ…アアアアアアア！！」

鎖に貫かれる少女。
セラフが作り出す結界の中に、彼らの因子が充満する。それは、私にも影響を与えているようだった。

『…ああ…』

熱い。熱い。
身体が熱を持ったような錯覚に陥る。