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「おいグレン。仲間を見捨てて逃げたりしないよな?」
グレンが仲間を見捨てるわけがない。なのに、
「中佐。ここは人質を殺して逃げるべきでしょう。居場所が分かってるのに襲ってこないところを見ると、幸い向こうは私たちに興味がないようですし」
「はぁ‼?おい鳴海‼てめぇふざけ…‼」
「ふざけているのは君だ」
それに俺はカッとなり鳴海を睨み付けながら口を開いて怒鳴るが、途中で胸を押される。
そんな鳴海の表情は険しくて…でも苦しくて辛そうだ。
「あの人質の中には僕の同期もいる。君よりずっと動揺しているが……辛そうな顔で騒いだ方がいいか?」
「………おまえ…」
なんて言えばいいのか分からない。仲間は家族だ。家族が捕まってたら、俺は鳴海みたいに平気なフリなんて出来ない。がむしゃらに、何がなんでも助けに行こうとすると思う。
「ですがこれ…囮任務なんですよね。吸血鬼の目を新宿に集まっている軍本隊へ向けさせないための…」
ずっと静観していたシノアが口を開いてグレンに聞いた。俺もグレンに視線を向ける。
「そうだ。人間が名古屋に攻め入っているように見せたい。だから派手に戦っているフリをする」
つまり、それは。
「戦うの?でも、あれほどゆったり待ち伏せされてたら絶対勝てないよ。上位始祖の…Aって子に関しては笑顔で僕らに手を振ってるし。…あ。"まだ?こっちから行ってもいい?"って言ったよ」
白髪頭の言葉に再びスコープで名古屋市役所に居るAを見る。
本当だ…吸血鬼の都市に居た頃俺たちに向けていた、あの笑顔でこちらに手を振っている。
「…A…」
ギュッと手を握り締める。
Aは…アイツは吸血鬼だ。だからいつかは戦うかもしれないって思ってた。
けど、新宿の時にミカに聞いた。
Aは俺がサングィネムを逃げ出した後も、ミカに色々良くしてくれてたって。
いつかきっと俺に会えるから今は辛くても生きろってミカに言ってくれてたんだ。俺とまた会えた時、きっと俺がミカを求めてくれるからって。
Aはミカにとってのグレンみたいな存在なんだ。
きっと、あいつにとっては家族みたいな存在なんだ。ミカが吸血鬼になった後に…独りぼっちのミカを側で見守ってくれていたのは、支えてくれていたのはAなんだから。
「…よし、作戦を説明する」
なぁA、ミカ。俺はーーーー
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作者名:レイ | 作成日時:2020年8月4日 17時