２ ページ2
「クルルに甘いのも知ってる」
『うん。それは認めるよ』
家族思いのいい子だし。それなりに慕われていると思っている。そう思いたい。
クルル・ツェペシ第三位始祖は私が吸血鬼になってから出来た初めての同性の同族だ。特別意識は出てしまう。
…とは言え元々妹などはいないが。
まぁ何れにせよ、特別可愛がっているのだ。それは自他共に認められているだろう。
そんなクルルに日本に来ないかと誘われたのだ。行かない理由などない。
「伴侶を蔑ろにするなんてな」
『まぁまぁ。たまには姉妹仲良くね？』
そう。伴侶。
私ーA・セオフィエル第二位始祖は同位であるウルドの伴侶なのだ。
彼からの告白で一緒になったわけだが、まぁ最初の内はウルドの気持ちに応えるつもりはなかった。というか、応えられないと思っていた。
何故なら私の方が彼よりも百年ほど早く吸血鬼になっていたから。
だから愛情や恋情など、私に芽生えるはずがないのだと思って、千年に及ぶウルドのアプローチを躱し続けていたのだが、紆余屈折あり、契りを交わし、晴れて伴侶となったわけだ。以降ずっと一緒にいる。
兄様ー真祖にも大層驚かれた。私が一番驚いたけど。
人生…吸血鬼生何が起こるか分からないものである。
「妹と仲良くするために伴侶を放って五十年も日本へ行くのか？」
『あはは』
そして私は明日から日本へ行く。それも五十年も。
それは私が勝手に決め、さしものウルドもキレたのだ。
彼は私を屋敷の奥深くの部屋に閉じ込め、身体中から血を吸い、オブラートに包むと…まぁ、手酷くヤり、何度も説得しようとした。だが私も譲らなかったのだ。私にも色々あるからね。
結果、最初は百年行くつもりだったのが五十年まで減った。
あと、半年に一度はウルドの元に帰ることも決まった。半年に一度はまぁまぁの頻度だと思ったのだが、これ以上ウルドを怒らせると怖いので了承した。
そんな頻度で帰るつもりなどなかったのだが。…まぁどこかで一時帰国はしただろうけれど。
『ウルド』
「…なんだ」
どこか不貞腐れたような表情でウルドは私を見下ろす。
周りから見ればただの無表情にしか見えないと言われるだろうが、流石に何千年も伴侶をしていたら分かる。
これは、完全に不貞腐れている。
『ふふ、ウルド』
「…」
『一番は、ウルドだよ？』
「当たり前だ」
憮然と答えるウルドに小さく笑みを溢すと腕を伸ばして彼の頬を包み込み、こつりと額同士を当てる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 164人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レイ(プロフ) - 露亞さん» 私の妄想満載の小説を素晴らしいだなんて…！ありがとうございます！のんびり更新していきますので、また良かったら読んでみてください！ (2020年6月15日 18時) (
レス) id: e8675e311e (このIDを非表示/違反報告)
露亞(プロフ) - ウルド様ァァァあ”あ”ウルド様！！！素晴らしい小説ですね！！！更新頑張ってください！！！！！ (2020年6月15日 18時) (レス) id: 5fe7b44b45 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レイ | 作成日時：2020年6月6日 21時
