キミがやさしい人だから 4

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「っ、揶揄わないで下さい」

思わずそう言ってはみたけれど。

「別に、本心だけど」

なんとなく樹先輩が冗談で言ってるわけではないような気はしていた。でもだとしても、反応に困ってしまう。樹先輩がそんなことを私に言う理由を考える。……思い当たる節が一つあった。

「あの、そんなに気を使ってもらわなくても大丈夫なんで」
「？なんのこと？」

あれ？おかしいな。察しの良い樹先輩なら私の言おうとしてることが解りそうなのに、怪訝そうな顔をしている。直接的なことを言うのは憚られるから察して欲しいのに。

「そんな、慰めてくれなくても大丈夫です」

今一度言葉をぼかしてそういうと、樹先輩はようやく私の言わんとしてることを察したのか表情を変える。

「なにお前、俺が慎太郎のことで同情でお世辞言ってると思ってんの？」
「ちょっと、樹先輩！」

いつ慎太郎君が来てもおかしくないのに、彼の名前を出した樹先輩に流石に思わず返す声がきつくなった。と同時に「あれ？」っと思い時計を見ていると、いつもだったら慎太郎君が来てる時間をもう過ぎていた。

樹先輩が何かを私に言い返そうとして、先に聞こえて来たのは慎太郎君にしては静かなノックの音。それもそのはずで、「はーい」という樹先輩の返事の後に入ってきたのは慎太郎君ではなく京本さんだった。

「悪いね、始まる前に」
「どうしたの？きょも」

時間前に京本さんが控室にくるのは珍しいので樹先輩がそう尋ねる。

「知らせるなら早いほうがいいと思って。さっき慎太郎から連絡あって、熱あるらしいから今日休んでもらった」

なめらかで聴きやすい京本さんの声で届けられてたのはそんな知らせだった。

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