キミがやさしい人だから 4

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「俺らお似合いだって」

上機嫌な樹の声に、咄嗟にそちらの方を向いてしまった。Aちゃんは此方に背を向けているからその表情は見えない。ただ声音と同じく甘い樹の笑顔が視界に入る。

「あの」
「あ、すみません！」

お客様に声を掛けられて我に返って、なんとか顔に笑顔を貼り付けた。

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使用済みの食器を片付ける為にキッチンに入るときょもが真剣な顔で作業をしていた。

「きょも、それAちゃんのテーブルのバースデープレート？」

ケーキにアイス、フルーツにホイップクリームとベリーソースを丁寧にプレートに盛り付けておるきょもが一息ついたのを見計らって声を掛けた。

「そうそう。樹がさっきそろそろ出して良さそうって言ってたから」
「……もう直ぐ完成だよね？俺出してくる」

偶々俺がキッチンに入ったタイミングで偶々出来上がった注文があった。それを俺が運ぶことになんら変な所はない。けれど切り出すのに躊躇したのは、樹がきょもに声を掛けたのだから樹が運ぶべきなのではないかという考えが頭を過ったからだ。何か狡いことをしている時みたいな罪悪感が湧いて落ち着かない。

「うん。お願い。……よし、完成！」

けれどきょもは極々自然にそう答えて綺麗に盛り付けられたバースデープレートを俺に差し出した。

「俺、キッチンから離れられそうにないからAちゃんによろしく言っといて」
「うん。わかった」

いつも通りのきょもの様子に俺は別に変なことをしてる訳じゃないのだと気持ちが軽くなる。


プレートを持ち上げた所で樹がキッチンに入ってきた。

「あれ？」

俺の顔と手に持ったバースデープレートを交互に見て少し驚いた顔をするから、一度薄らいだ罪悪感がまた顔を出す。

「樹、」

何か言い訳を探そうとして慌てて樹の名前を呼んだ。

「それAのとこのだよな？」

樹の方はもう状況を察したみたいで一応確認、といった調子でそう尋ねてきた。

「そうだけど」
「先越されたかー」
「ごめっ！」

樹の言葉に"やっぱり"という想いが浮かび咄嗟に謝罪の言葉が口から出る。

「別に謝るようなことじゃないだろ。今タイミング良さそうだからよろしく」

そんな俺に呆れた様に樹は笑った。

「あ、うん、わかった」

その顔を見た俺はなんだかほっとして、気持ちを切り替えると共に背筋を伸ばしAちゃん達のテーブルへと向かった。

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