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「北、斗?」
「あー、悪い。そっか。いや話の流れ的にそうかもとは思ったけど、そっか」
「う、うん」
「……」
私が答えた後、直には北斗からの返事は帰ってこなかった。すこしして電話越しに北斗が息を深く吸い込むのが聞こえる。
「……良かったな、また誰かを好きになれて」
その声の持つ湿度にどきりとした。とっさに高校卒業の日に、想いを伝えてくれた時の北斗の切なげな表情が脳裏に浮かんで。
「っ、ありがと」
思わず息を飲む。
「ごめん、続けて」
これまでよりも少し低くなった気がする声に続きを促されて、翌朝チアキ相手に感情的になってしまったことその後まだちゃんと話せていないことまでを私は話した。
慎太郎君がチアキに想いを寄せていることだけは、慎太郎君が必死に隠していることなので北斗にも言わなかったけれど。
/
「あのさ、」
私がひとしきり話終えたのを受けて北斗が口を開く。
「ありきたりな事しか言えないけど、お互い納得いくまで本音で話すしかないんじゃない?」
「……やっぱ、そうだよね」
本当はどこかで解かっていたその答えを北斗が真っすぐに私に突き付けた。
「素直言えばいいんじゃない?仲直りしたいって。……俺はそうしたけど、A相手に」
「…………」
思い出したのは、数年ぶりに二人で出掛けたあの日のこと。
「まあめちゃくちゃ緊張したからAが身構えるのも解るけど」
北斗も同じ日のことを思い出しているのか笑い交じりにそう語った。
「めちゃくちゃ緊張感してたんだ、あの時」
「そうじゃない様に見えた?」
「見えた」
「そりゃ良かった。俺も余裕のある大人の男が演じられるようになった訳だ」
「なにそれ」
突然得意気になる北斗に思わず吹き出す。もう二度と話すこともできないと思っていた北斗とだって今こうして笑い合ってるんだ。そう思えば一歩を踏み出す勇気が湧いてきた。
「北斗、ありがとね」
「どういたしまして。って何もしてないけど」
「そんなことないよ。話聞いてもらって良かった」
「そ?それならこっちも良かったよ」
「チアキに連絡してみる」
「おう。がんばれー」
北斗との通話を切って、チアキに連絡しようと一覧ページを開いた所で気づく。
『今週どっかで一緒にごはんいかない?』
チアキからメッセージが届いていた。
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夕色(プロフ) - あずみさん» 長いのに一気読みありがとうございます……!コメント嬉しいです。今後も慎太郎の格好良い所書けるように頑張りますねー! (2月12日 20時) (レス) id: f0afa3630e (このIDを非表示/違反報告)
あずみ(プロフ) - 一気読みしてしまいました…!慎太郎くんかっこよくて最高です!笑 めっちゃきゅんきゅんドキドキしてます!!^^ これからも更新楽しみに応援させていただきますね!! (2月11日 23時) (レス) @page39 id: fffeedeac5 (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ★mmiioo★さん» コメントありがとうございますー!樹先輩については書きたいような、ずっと本当の所は解らないままでいて欲しいような……って感じです! (11月30日 22時) (レス) id: f0afa3630e (このIDを非表示/違反報告)
★mmiioo★(プロフ) - 慎太郎サイドだ!主人公ちゃんを応援したいが、樹先輩も気になる。 (11月29日 6時) (レス) @page19 id: 9bdd0af86e (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ★mmiioo★さん» なんかなかなか煮え切らない展開が続きますがきょも共々生温かい目で見守っていただけると嬉しいです。頑張れ慎太郎!って思いながら書いてます😌。 (11月23日 23時) (レス) id: f0afa3630e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夕色 | 作成日時:2023年10月17日 12時