番外編-5 ページ20
/
Aちゃんをそんな遠くまで連れていくのも悪いので良く利用する大学近くのカフェに入った。
「俺買ってくるからAちゃんはここで待ってて。ドリンク何にする?あ、決めるのゆっくりで大丈夫だから」
予想はしていたけれど結構人が入っていたので俺は慌てて席取りを済ませる。荷物を置いて立ったままのAちゃんに席を勧めた。つい早口で話してしまったのは緊張の表れだったと思う。
「じゃあ、ホットコーヒーで。えっと……ミルク、あればお願いします」
一度躊躇した後にAちゃんがそう付け足した。そんな事遠慮する必要なんてないのに。
「りょーかい」
レジで自分の番が近付くとつい何時も買ってしまうチョコチップクッキーが目に入る。そういえば昨日、Aちゃんは甘いモノが好きだという話をしていたのを思い出して手に取った。
席で待つAちゃんは遠目から見ても解る緊張した面持ちだった。
「お待たせ」
トレーを持って俺が席まで戻っても、その緊張は解けない様子。当たり前といえば当たり前だ。だって多分、Aちゃんの緊張の一番の原因が俺だから。嫌われてる訳じゃなさそうだけど明らかにAちゃんは俺の事が得意じゃない。なのにこうして付き合ってくれているのは、優しさなのか、はたまた怖がられているのか、どっちだろう。
「……おいしい」
自分から誘っておいた癖に、若干の後悔を始めていた俺の心は、すすめたクッキーを一口食べた瞬間にそう呟いたAちゃんの表情で一気に軽くなった。そんなに表情が変わったという訳じゃないのになんとなくキラキラした感じがしたのだ。
「本当?良かったー」
無言で二口目を口に運ぶAちゃんを見てると野良猫の餌付けに成功した時みたいな気分になった。勢い任せにAちゃんを誘ったのはチアキの事を聞きたかったからだけど、なんかもうわざわざそんな自分の首を締めるような事をしなくてもいいような気すらしてきた。
「慎太郎君、なんか話あるんじゃないの?」
けれど恐る恐るといった調子で俺と目を合わせたAちゃんの問いが俺を現実逃避から連れ戻す。
そこからのやりとりは、正直いっぱいいっぱいだったからあまり良く覚えていない。結局Aちゃんにチアキの事を訊いて、案の定の返事が返ってきて、予め予想していた回答だったはずのにツンとした痛みが心臓のあたりを突いた。
744人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夕色(プロフ) - あずみさん» 長いのに一気読みありがとうございます……!コメント嬉しいです。今後も慎太郎の格好良い所書けるように頑張りますねー! (2月12日 20時) (レス) id: f0afa3630e (このIDを非表示/違反報告)
あずみ(プロフ) - 一気読みしてしまいました…!慎太郎くんかっこよくて最高です!笑 めっちゃきゅんきゅんドキドキしてます!!^^ これからも更新楽しみに応援させていただきますね!! (2月11日 23時) (レス) @page39 id: fffeedeac5 (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ★mmiioo★さん» コメントありがとうございますー!樹先輩については書きたいような、ずっと本当の所は解らないままでいて欲しいような……って感じです! (11月30日 22時) (レス) id: f0afa3630e (このIDを非表示/違反報告)
★mmiioo★(プロフ) - 慎太郎サイドだ!主人公ちゃんを応援したいが、樹先輩も気になる。 (11月29日 6時) (レス) @page19 id: 9bdd0af86e (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ★mmiioo★さん» なんかなかなか煮え切らない展開が続きますがきょも共々生温かい目で見守っていただけると嬉しいです。頑張れ慎太郎!って思いながら書いてます😌。 (11月23日 23時) (レス) id: f0afa3630e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夕色 | 作成日時:2023年10月17日 12時