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「お前誰かと喧嘩なんか出来たんだな」
感心したように樹先輩が言う。
「喧嘩っていうか、厳密には喧嘩ではないんですけどちょっともめちゃって」
「ふうん。でもそれだけなら別にお前が慎太郎と気まずなる理由なくない?」
「それ、は」
「……喧嘩の理由が慎太郎とか?」
「!?」
——本当にやだ、この先輩。
勘が鋭すぎる。昔からそうだった。
「反応分かりやすっ!」
樹先輩の言う通り露骨に顔に出してしまった私を見て樹先輩が笑った。
「……慎太郎君には、言わないでください」
「いや言わねぇけどさ。慎太郎のことで喧嘩って何?恋話?お前慎太郎のこと好きだったの?」
「…………っ、」
まさかここまで全部言い当てられるとは思っていなかった私は再び足を止め、「そんなに私は分かり易いのか」と焦りと恥ずかしさで顔を一気に紅くする。
「…………え、マジで?」
だけど私の反応を見た樹先輩の驚いた様子に、樹先輩が半分くらいは当てずっぽうで物を言ったんだと気付く。とりあえず何かを言えば私がYESかNOか答えるにしろ答えないにしろ、何かしらの反応をするだろうからそれ見るつもりで言葉を並べただけだった。だけど、今回たまたまそれが大当たりしてしまった。
「ちがっ!」
失態を取り返そうとした私に樹先輩はははっと乾いた笑いを浮かべる。
「顔真っ赤にして否定しても説得力ゼロだけど?」
「〜〜〜〜ッ」
この人には口では一生勝てないだろうと思い知る。
「そっか。Aが慎太郎をなー」
しみじみとした様子の樹先輩に、消えてなくなりたくなる。これ以上私が否定の言葉を繰り返したところで樹先輩の中の確信がひっくり返ることはないのだろう。
「……誰にも言わないでください」
なんとかかんとか絞り出したのはその言葉だった。「誰にも」なんて言っても今も関わりのある私と樹先輩の共通の知り合いなんて慎太郎君と京本さんしかいないけど。その二人にこの気持ちを知られたくなかった。
「心配しないでも言ったりしねぇって。ただ、」
もったいぶるように一度言葉を切って、樹先輩が顔を私に近づける。
「彼奴、他に好きな女いるよ?」
「…………っ、」
そんな事は樹先輩に言われるまでもなく知っている。本当に最初から知っていたことなのに、言われた瞬間胸に締め付けられるような痛みが走った。
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夕色(プロフ) - あずみさん» 長いのに一気読みありがとうございます……!コメント嬉しいです。今後も慎太郎の格好良い所書けるように頑張りますねー! (2月12日 20時) (レス) id: f0afa3630e (このIDを非表示/違反報告)
あずみ(プロフ) - 一気読みしてしまいました…!慎太郎くんかっこよくて最高です!笑 めっちゃきゅんきゅんドキドキしてます!!^^ これからも更新楽しみに応援させていただきますね!! (2月11日 23時) (レス) @page39 id: fffeedeac5 (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ★mmiioo★さん» コメントありがとうございますー!樹先輩については書きたいような、ずっと本当の所は解らないままでいて欲しいような……って感じです! (11月30日 22時) (レス) id: f0afa3630e (このIDを非表示/違反報告)
★mmiioo★(プロフ) - 慎太郎サイドだ!主人公ちゃんを応援したいが、樹先輩も気になる。 (11月29日 6時) (レス) @page19 id: 9bdd0af86e (このIDを非表示/違反報告)
夕色(プロフ) - ★mmiioo★さん» なんかなかなか煮え切らない展開が続きますがきょも共々生温かい目で見守っていただけると嬉しいです。頑張れ慎太郎!って思いながら書いてます😌。 (11月23日 23時) (レス) id: f0afa3630e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夕色 | 作成日時:2023年10月17日 12時