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『動かないでよ、ズレちゃうから』
夜久「ウン」
『……よし、うん。こっちの方が可愛い』
夜久「可愛いは、嬉しくない」
『今ぐらいは喜んでよ』
眉を下げてそんなことをいう夜久、こいつはどこまでいっても夜久衛輔なんだと思う。
『どうせなら手でも繋いでみる？』
夜久「つっ、！？！繋がない！！！」
顔を真っ赤にしてプンプン怒っている、仕草は完全に女の子だ。さっきから可愛いという感情しか浮かんでこない。
あぁ、本当に私が男子で夜久が女の子だったら、良かったのに
そしたらこんな風にたくさんリードして夜久の好きなところ行って、幸せそうに笑う姿をたくさん見て、自分だけのものにしてやりたい。
夜久「なんか、変？」
『いーや、何か食べに行こうか。まだ空いてるだろうし先買っちゃおう』
夜久「ん」
夜久は女の子になりきることを諦め、なるべく会話をしない無口なキャラで行くようだ。それも頭いいね。
『焼きそば2つ下さい』
「はっ、はい！！！」
『ありがとう』
「あっ、あの！！何組ですか！！」
『……3年5組でコスプレ写真館やってるんだ。良かったら来て欲しいな』
「行きます！！！！」
元々背の高い私は当然のように男子に見えているらしい。
隣にいる夜久との身長差も相まって、どうやらモテている。ちょっと嬉しいかもしれない。
夜久「……」ﾑｽ
『あーごめん、焼きそば貰っていいかな』
「は、はい！ありがとうございました！！！」
商品を受け取ってから休憩所の方へ向かった。
『あれ、もしかしてリップ塗ってる？』
夜久「うん、メイクした方が女子っぽいからって」
『ふーん』
夜久「なんだよ」
『別に。でも、焼きそばなんてもの食べたらリップすぐ落ちちゃうんだし、後で塗り直そうね』
夜久「えぇ……」
『めちゃくちゃ可愛くしてたら逆に気付かれないんじゃない？』
たしかに、そうやって夜久が納得しかけたとき、最悪のタイミングで声を掛けてきた人がいた。
「あれ、狼谷……？」
『人違いじゃないですかね…』
「流石に、間違えないって。コスプレ？」
夜久と向かい合って座っている今、私の正面、つまり夜久の背後から海がやって来た。私のことに気がついて声を掛けてきたようだ。
海だけなら良かったのだ、けど本当に今会いたくなかった。夜久のために。
灰羽「え！！Aさんなんスか！？！
っていうか、Aさんも夜久さんも酷いです！朝イチで来てって言ったのに！！黒尾さんに預けたんで受け取ってくださいね！」
『ウン』
灰羽「ところで、この方は…？」
海「……」ﾆｺﾆｺ
早速、1番高くて険しい壁が向こうからやって来てしまった
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作者名：HAL | 作成日時：2024年3月6日 23時
