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『あと1点、あと……1点、遠い』
身長が伸びて175cmになったおかげで、ネットから手は出るようになった。だから1,2回ぐらいは私も打ちたいな、とか思ったりする訳で。
『翔陽！』
日向「よっし、あざス！」
彼にトスを上げると、如何に影山くんのセッティングがいい意味でぶっ飛んでいる理由が分かる。
今でこそ目を瞑らずに打っているが、だいぶ練習をしてきたと自分でも思っていた中学時代、つまり私が1番バレーに打ち込んでいたあの時でさえあんなトスをあげられたかと思えばそんな自信は全く無い。
黒尾「俺も打ちたいです」
『私も』
黒尾「え」
『でも次は月島君ね』
月島「え、僕ですか……僕は別に」
『ダメです。みんな平等に振り分けるので』
嫌な顔した、ため息ついた。なんだこの大型1年生は。可愛げしかない翔陽とはまるで正反対だ。
月島「じゃあ、お願いします」
言葉の前にため息が聞こえたような？ちょっと意地悪してやろうか。
次のターンは赤葦くんのサーブから始まる、黒尾の安定したサーブレシーブから私の頭上にボールが上がる。そして、月島くんを見て彼の方へと高めのトスを上げる。
『行け！』
月島「……ハァ！？」
キレた、そりゃそうか。練習試合で見たときより高めに上げてるんだもん。
少し……いや、かなり嫌な顔をして高く飛んでブロックの上から打ち下ろした。けれどもやっぱりその先には夜久がいる。
『木兎くん来るよっ、月島くんと翔陽タイミング合わせて、黒尾レシーブね』
黒尾「分かってるっつの！」
月島くん指示のもとコースを絞り、レシーブは私と黒尾の2人体制。いや私が木兎くんのスパイクを上げられるとは流石に思っていないけど、でもいないよりはいる方がマシだと思うし
『(レシーブ体勢乱れた、ブロックいい感じ……)』
木兎くんと目が合った。
すると彼は少しギクッとして、スパイクのパワーを弱めた。勿論全然威力はあるけれど、私でも取れなくはない、ぐらいのパワー
『黒尾上げて！！！』
十分な助走距離、確保完了。前回の合宿のときから頭の中で何回も何回も何回もシュミレーションしてきた。
仁花ちゃんだけじゃない、みんなに。これは私がまたバレーボールの世界に飛び込む第1歩だから。
何度断っても懲りずに、何回も何回も声を掛け続けてくれたから。だからまだ、私とバレーは繋がっていられるから。
だから私は夜久に、黒尾に、みんなに見て欲しいんだ。
谷地「飛んだ………！」
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作者名：HAL | 作成日時：2024年3月6日 23時
