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『炎司くんがどう思ってるか、私も聞きたい。それでおあいこ』
「水野はカッコイイやつだと思ってる」
『え、まじ………』
「俺とは違い凄いヤツだと、な。」
『え、な……待って顔見せて、ちょっと！！』
「見るな」
『見せろ！！！』
9月にしては明るいけど、もうすっかり秋の訪れを感じられる風が吹いていた。お互いに変な気持ちになりながら家路を辿っているこの時間が、とっても幸せだった。
この、付き合っている訳ではないがなんとなくお互いによそよそしい時間が最も楽しくて尊い時間だから。
『(告ったら、関係が崩れちゃうと思ってたから。)』
「もうこの話は終わりだ。」
『………そだね』
「………」
家までの距離は、多分あと半分ぐらい。
それなのに2人して無言になって……って言っても炎司くんが静かなのはいつものことで、私がきっと静かになってしまったせいでとっても気まずくなっていた。
『ねえ、』
「何だ」
『炎司くんって、好きな人いる？』
「何だいきなり」
『いいじゃん別に、気になっただけ』
「何の脈絡も無いな」
『高校生なんだよ！？！？浮ついた話の1つや2つはあるでしょ！』
「水野はどうなんだ？」
『うーん、どう思う？』
「どう、とは？」
『好きな人がいるかどうか、じゃないの？』
「いそうだ。」
なんでもないようにいうのが、街灯に照らされていつもよりかっこよく見えた。
『流石は炎司くん。』
「いるのか？」
『うん。』
「そうか」
『炎司くんはどーなの』
聞いたら後悔するかな、でも炎司くんと1番仲の良い異性は私だって、今は胸を張って言える気がするから。
「いる、かもな」
『かもって何よ』
「そう言った経験がないから分からないな。」
『あ、なんだ初恋ってことか。同じじゃん私も！』
「意外だ」
『ちょっとどういう意味よ！』
そこから会話が途切れることはなくて、お互いに充実した時間を過ごしていた。
『毎度毎度ありがと、またね！』
「あ、待て、これを。」
『うん？絆創膏？』
「顔の傷、早く治ると良いな。」
『あ、っ………ありがと、う』
直視出来ないほどの笑顔に、真っ直ぐな優しさ。
目の前にいるこの人が好きだって、今すぐに叫びたい。駆け出したい。付き合いたい。
炎司くんと、もっと一緒にいたい。
『………好き、だ』
「何か言ったか？」
『い、いやっ、ここの絆創膏治りが早いから、好きだな〜って！！！』
「そうか、良かった。じゃあまた明日。」
『うん！あ、ご馳走さまでした！』
自分で自分にツッコミを入れるほどの言い訳、まさか口から出るとは思わずに2人して家の前で一瞬固まった。
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作者名：HAL | 作成日時：2023年12月29日 7時
