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『焦凍くんがいたから、私まだ生きてるよ』
炎司「おい、無理に起きるな！」
まだ辛いけれど無理やり身体を起こして、彼の方を向いた。
『炎司くん、1回しか言わないから聞いて』
『私は……学生時代から何十年経った今でも貴方のことが好きです。
炎司くんが妻帯者で子どももいるの、分かってる。けど、どうしても好きだって気持ちだけが忘れられないんだ。』
『ごめんなさい』
「……」
『元カノにこんなこと言われても困るだけだよね、ホントにごめん。』
『でも、私がずっと炎司くんのことだけが大好きなこと、忘れないで』
『それで、私のことキッパリ振って！』
昔から、辛いときでも貼り付ける笑顔が得意だった。
自分の気持ちとは裏腹に、明るく振る舞うことが得意だった。
だから、そうして昔のように笑顔で『なんちゃって』と言えるような空気を作るのだ。
『えっ、？』
けれど、炎司くんの取った行動は想像すらしていなかったもので。
『や、めてよ……これじゃ、ダメだよ炎司くん』
炎司「Aの気持ちに応えることは、もう出来ない。」
『しってる、しってるから。なのに、抱き締めるなんて狡いじゃん、ヒドイよぉ』
炎司「あぁ、そうだ。酷いことをしている自覚はある。
だが、昔は出来なかったから。今だけだ」
『だいすき、大好き炎司くん、これ以上好きにさせないで』
大きくて暖かい彼の胸の中で私は俯き、おさまることを知らない涙を拭い続けていた。
抱きしめてくれている彼の胸から聞こえてくる鼓動が心地よくて、なんだか懐かしくて、まだまだ諦められそうにはなくて。
『……』
気が付けば、彼の腕の中で眠ってしまっていた。
炎司「……寝たのか、ゆっくり休め。」
小さな身体を優しくベッドに横たわらせ、じっと見つめたあと病室をあとにした。
ｶﾞﾗ
「………聞いていたのか」
「ちょっと」
「そうか」
「別に文句は言わねえよ、あの人を見てれば、どんだけ親父のことが好きなのか分かるから」
「………そうだな」
「あの人が起きたら見舞いに行きたいから教えてくれ」
「分かった」
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
炎司くんに気持ちを全部ぶつけて大分すっきりしたはずなのに、随分と変な夢を見た。
それはまだエンデヴァーというヒーローが若いと言えるような時代。若いのにヒーローとしては一流で、見合いの相手に強い個性の女を探しているときのことだった。
『おかーさん、私の義足どこー？って、電話中か。』
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作者名：HAL | 作成日時：2023年12月29日 7時
