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「話ができる状態なのか？」
私が頼んだから外の様子を見て、人はいないと教えてくれた。
しかし私の状態を見て、心配からかそんな言葉を投げかけてきた。
『うん、大丈夫。頭回んないけど話はできるから、きいて』
「分かった。」
『あのね、私が脚をなくしたときのこと覚えてる？』
あの時からずっと避けてきた話題、今になってようやく口にした。
「勿論だ、忘れるわけが無いだろう」
『あのときに、私が炎司くんに言ったこと、おぼえてる……？』
恐る恐ると言った様子で彼の表情を伺った。
想像すらもしていなかった、とても穏やかで初めて見るような顔だった。
炎司「あぁ、一言一句ハッキリと覚えている。」
『やっぱ、炎司くんや燈矢くん、それに焦凍くんまでもが辛い思いをしたのは私の言葉があったから、だよね』
炎司「そうかもな。」
やっぱり、そう思うしかないほどに清々しく頷く彼に自分で聞いておきながらかなり傷ついた。
炎司「ただ、勘違いはしないでくれ。
確かに道を誤ってしまったきっかけはAの言った言葉にある、が、燈矢や焦凍、それに冷を傷付けたのはAじゃない、俺だ。」
『うん』
炎司「泣くな、大丈夫だ」
『私ね、ずっと忘れてたの。あんな酷いことばっかり言ってさ、炎司くんを更に追い詰めた。
それなのに私は、辛いこと全部忘れて勝手に1人で傷ついてたの……ごめんなさい』
炎司「だからお前が謝ることなんて何も……！」
『ちがうの、ちがうんだよ…
私、炎司くんがお見合いをしたって聞いたとき、凄く醜い気持ちが溢れてきたの。
私が炎司くんの隣にいたかったって、それに、荼毘のアレを聞いた時も、もし冷さんじゃなくてあたしだったらそんなことには絶対にしなかったって、ならなかったって思ったの。
本当はあの区画を警備するの、いやだって思っちゃって、そんなんヒーロー以前に、人として失格なのに、どうしても溢れてきちゃった。
結局、みんな無事だったけど、冷さんたちが荼毘と炎司くんの元へ行ってしまったとき貴方たちをあきらめた。』
『ほんとうは最低なの、ヒーローとして呼ばれたのに私は、その責務を投げ出しかけた。
でも、こんな酷い気持ち誰にも言えなくて、どんどん私が醜くなっていくのがもう嫌で、いっそのこと死にたくなっちゃったの。』
『でもね、焦凍くんが、そんなこと言わないでって言ってくれた』
炎司「焦凍が、そう言ったのか？」
私の言葉に驚くその表情は、紛れもなく子どもの成長に驚く父親そのものだった。
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作者名：HAL | 作成日時：2023年12月29日 7時
