アナタは太陽【ヒロアカ】 (ページ38)

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「………すると、その怪我はヴィランのせいではないんだね？」

『はい、建物が倒壊した際の瓦礫に巻き込まれただけですので』

「一緒にいたインターン生の彼にも話を聞いているんだけどね、ヴィランの当時の動きについて調書と合致しているか少し思い出してくれるかな」

『分かりました』

"『炎司くん、もっと身体の中にある熱を冷まさないとねぇ』"

ちがう

"『あたしじゃないんだ、あたしじゃダメみたい』"

これもちがう

"『愛してた』"

「……さん、水野さん？」

『すみません、体調が悪くて……今度でも良いですか…？』

「分かりました、また来ます」

『っ、……全部、全部私が、私が言ったんだ…』

朦朧とする意識の中で、もう死ぬかもって思って、今まで溜めたものを吐き出すように彼に伝えた。

『もっと、もっと強い個性の人と一緒にならなきゃ』

『私の個性じゃあ、強くなれない』

『炎司くんは、もう誰にも負けないでよ』

『いっつも真っ直ぐ上を見てる貴方が大好き』

そうやって、私の言葉が炎司くんを追い詰めていた。

私なんかよりもずっと彼は執拗く、私のことをずっと引き摺っていたんだろう。

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『(私、知ってるの。氷叢の家と貴方が見合いをしたこと)』

その話はちょっと有名になって、どんどん彼が手の届かない場所に行ってしまうような気がした。

素直に、あの人の妻になる女性が羨ましいと思った。

荼毘の告発があったときも、私ならもっと上手くやれていたって思った。まるで他人のフリをして、石を投げる振りをしてみたんだ。

けど、あの人が狂ったきっかけはどう考えても私を巻き込んだあの事件で、私が朧気に彼に伝えたあの言葉で、それがなければこんなことにもなっていなければ、彼をこんなに辛い目にあわせずに済んだ。

けど、私のことを好きだと言ってくれる焦凍くんには出会えなかった。

もう、何が正解か分からなくて、それでもまだあそこで荼毘を、轟燈矢を止める家族の中に私がいれたら、なんてことが未だに頭をよぎってしまう。

『あの時、死んでいれば良かったのに』

どんどん強くなる荼毘の熱に、皮膚が焼かれている感覚だけがハッキリとしていた。

「そんなこと、言わないで」

『焦凍、くん…？』

馬鹿な、彼は400kmは離れた場所にいたはず。

「貴方がいたから、俺頑張れました」

『ごめんなさい』

「親父から、聞きました」

『え、？』

「ありがとうございます」

彼は、優しく微笑んだ。

それから、家族の元へ向かう焦凍くんの背中はとても大きく見えた。