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「久しぶりだな。」
『……久しぶり、だね。元気してた？』
上手く笑えているだろうか、私は。
久しぶりだなんて言って、こうして直接顔を合わせるのは何十年ぶりだろうか。だってさ、好きなまま別れたんだよ。
「あぁ、お前こそどうなんだ？」
最近はテレビでよく見るからあまり心配はしていなかったぞ、だなんてまた昔のような笑顔を見せる彼。おさまれ胸の鼓動、目の前にいる元カレは今既婚者だぞ！？
あぁ、でも……荼毘と呼ばれるヴィランによって彼の過去や人となりを世界に向けて悪い方向に発信してしまった訳だけど。
『テレビで見ていたんなら分かるでしょ？
私はいつでも元気だよ！昔っから！』
無理に口角をあげて、今ではもう慣れた営業スマイルとやらで彼からの言葉をかわす。かわせているかどうかは分からないけど。
「確かに、お前は昔から人一倍元気があったもんな」
『そーかな……あ、なんか飲む？奢ろうか！』
「良いのか？」
『もち、同級生のよしみってことで』
「同級生……な」
寂しそうに見えるその顔だって、私の目の錯覚だと思っていたい。
まだ未練があったと感じさせるような態度をとるだなんて。それも、自動販売機の前で、公衆の面前で。
細かいことを言ってしまえばプロヒーローや警察関係者ぐらいしかいないから、公衆の面前というほどの人目は無いのかもしれないけれど。
「そうだ、ホークスと話したのか？」
『うん、話したよ。
頭いいから話してて楽しかったけど性格は掴めなくて、うん、凄く強そう。』
「アイツは強いぞ」
もう最後に顔を合わせたのは何十年も前で、そのときはろくに会話ができる状態でもなくて。
けれど、今こうして直接話せているのが嬉しくてどうしようも無い気持ちが溢れてくる。それはもう、どこにも向けられない気持ち。
私がもっと強力な個性であれば良かったのかと思ったことは何度だってあった。
それを強く感じてしまったのは、1年弱前に見た雄英高校の体育祭。
なんでかって……もう理由はわかると思うけど、それは轟焦凍の存在だ。
そのときに一気に突きつけられたのだ。
未練がましくも、学生時代に好き合っていた相手に子供かいたこと。
結婚しているだけならまだ良い、いいんだ。けれど子供かいるという。それも4人も。
ついこの前までその認識は3人だった。が、荼毘の告発によりその認識が1人増えて4人にすり変わった。
私は荼毘の告発を家のテレビで見た。
時期柄仕事も減っていて、なんとなくニュースをつけながらスマホをいじっていたときのことだったのだ。
『(考えるのも嫌な気持ちが溢れたとは、言えないな)』
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作者名：HAL | 作成日時：2023年12月29日 7時
