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『じゃ、今日からインターン再開です、行ってきまーす。』
「「行ってらっしゃい」」
お母さんとお兄ちゃんに見送られて、コスチュームを手に電車を乗り継ぐ。
インターンってことは、炎司くんとまた顔を合わせるんだよなぁ。ちょっと緊張するかも。
彼と会うだけのことにこんなに緊張するのは初デート以来かも。
『……お、はよう…ございます』
「あぁ、おはよう。」
同じ電車に乗り合わせて目も合ってしまっては無視する訳にはいかない、と挨拶をしたら思ったより優しい声。
『寝れた？』
「あぁ、Aこそどうなんだ？」
『そりゃもうぐっすり。お兄ちゃんに炎司くんの愚痴を言ってました』
「昨日のか？」
『そ、昨日の。』
「Aのお陰で少しスッキリした、ありがとうな。」
『なら良かった。今日からまた頑張ろうね。』
喧嘩というようなものでもなければ、仲直りなんかもしない。
これが私たちだ、心地よい。
こんな関係が今日と明日と明後日と……ってずっと続いたらいいな。炎司くんと一緒にいたい。
その想いは彼と過ごす時間が長くなるにつれてどんどん大きくなっていく。
それは、間近で彼のことを見ていればいるほどに
吸い込まれそうになるけど、その燃えたぎる炎に灼かれそうになる。でも、不思議と熱くはない。
*
彼を見ていたい、彼とずっと一緒にいたい。彼の隣に居るのは私がいい。そんな想いを握りつぶしたのは、突如として年都市に現れた大型のヴィランだった。
『炎司くんっ、危ないッ！！！』
フラフラと足取りの覚束無い様子でいる彼の元に、ビルの一部が倒れようとしていた。
自分の持てる力を全部使って、炎司くんの体を自分の腕の力と個性で動かして、私が代わりになればって思った。
『……は、ﾊｧ…』
うん、死んでない。
『え、んじ、くん…生きてる…？』
「俺は、Aが…Aのお陰でっ、」
その建物が倒壊し始めたのは、ヴィランを退治した後のことだった。
プロヒーローは避難誘導に追われて、今ここには私と炎司くんの2人だけ。
きっと彼は、ヴィランとの戦闘時にたくさん炎熱を使ったせいで体の中に熱が溜まっていたんだ。
『ね、炎司くん。』
「何だ、痛むだろうが傷口を燃やすぞ。舌噛むなよ。」
『う、ん"っ……』
ハンカチを噛むよう口元に出されて、右脚の腿の辺りに言葉では表せないような痛みと熱さが走った。
「よく頑張ったな、もうすぐ医療施設に到着するから、だから。」
『炎司くん泣かないでよ、カッコイイ顔が台無しじゃんかぁ』
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作者名：HAL | 作成日時：2023年12月29日 7時
