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『やっぱここにいた、もう8時だよ？』
「知ってる」
彼の父が亡くなったと聞いてから、3日経った。
炎司くんは何かに追い詰められるように毎日毎日、放課後体育館で特訓をしているようだった。
私に何かが出来ないかと色々考えてみても、1ヶ月前のように優しく笑う彼はどこにもいないように思えてしまった。
その頃から、なんとなく距離が遠くなっていた。
『オーバーワーク、炎司くんが分からないはずないよね。』
「だったら何だって言うんだ、放っておいてくれ」
『放ってはおけないよ、だって……』
「だって何なんだ、お前は俺の親でも先生でも無いだろ？」
それ程までに追い詰められる理由があるのは知っていた。
けれど、それを直接言われてまだへらへらしていられるほど私は優しくなれない。
『クラスメイトで、クラスの委員長で、私はあなたの恋人だよ。
クラスの中で炎司くんと対等に話ができるの、私しかいないの分かってるでしょ？』
以前にも増して近寄り難い雰囲気を纏っているせいだからね
『それに、今そうやってオーバーワークになっているのを分かってて、明日からはまた1ヶ月単位でインターンがあるんだよ。
もしヒーロー活動をすることになったとき、今日の疲労が響いて誰かを巻き込んでしまったら、助けられたはずのものを助けられなかったら、炎司くんは後悔しないって言えるの？』
「関係、ないだろ」
『……そう、分かった。
私、炎司くんがそこまで周り見えなくなる人だと思わなかった。また明日ね。』
冷たくしてしまったことに後悔しながらも先に冷たかったのはあっちだから、と言い訳に言い訳を重ねて悲しい気持ちに蓋をして家まで歩いた。
『……えんじくんの馬鹿、バカやろー！！！』
「A、うるさい。なんかあった？」
『喧嘩した！！！』
「珍しいな、エンジくんって彼氏って言ってた奴だよな？」
『そう。色々あったからしょうがないのは分かってるんだけど、今日のは結構こたえた。』
「今日の？どんな喧嘩？」
『なんでお兄ちゃんにそこまで言わなきゃいけないの。言わないよ。』
「だよな、知ってた。」
『お兄ちゃん帰ってくるの久々だね、やっぱ警察て忙しい？』
「まあ、最近はインターン始まってるから俺らはちょっと落ち着いたかな」
『私たちが社会貢献している訳だ。』
「否定はしねえよ」
恐らく世界でいちばん仲のいい人、私のお兄ちゃん。今は警察官。
そんなに歳は離れてないけどずっと私の先を歩いていて、いつもカッコイイ。大好きなお兄ちゃん。
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作者名：HAL | 作成日時：2023年12月29日 7時
