11 ページ11
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「続きましてヒーロー科1年A組、水野A！！」
名前を呼ばれて舞台の上を歩いていく。
胸を張って、顔を上げて、私は今世界で1番綺麗なんだから。
『へへ、どーも！』
親友にメイクやドレス選び、それに私の良いところをたくさん教えて貰って本気で優勝を狙いに行った。
だから今日は……いや、今だけは、自信を持って私が世界で1番綺麗なんだとハッキリ言えるのだ。
*
『うぎゃーーー！！緊張した〜！！』
「有り得んぐらい美人だったよ、お疲れA！」
自分の出番が終わってまず駆け出したのは親友のところだった。
この子は炎司くんのことが好きって話を、嫌な顔ひとつしないで延々と聞いてくれる。
『炎司くん、ホントにいてビビったよぉ〜』
「でも自分で絶対来てねって呼んだんでしょ？」
『う、うん……』
「ほら、噂をすればその炎司クン来たよ」
『えっうそ！ねえ待って私変じゃない？前髪だいじょぶ？』
「変じゃないよ大丈夫。Aは世界で一番素敵。いってこい！」
本当にそうなんじゃ、って思えるほどの笑顔で背中をバシッと押された。
そして慣れないヒールやドレスに何歩か躓いた先に、炎司くんの巨体。思わずぶつかりそうになってしまった。
いや正直なところぶつかってあの筋肉に包まれたかったって気持ちはなきにしもあらずっていうか、って違うか。
『ごめん、ありがと……』
「あ、あぁ。」
私が炎司くんの筋肉に突っ込めなかったのも彼が私の体を支えてくれたから。顔を見上げることが出来なくて、声も絞り出したように小さい。
『まさか、炎司くんホントに来てくれると思わなかったよ』
「お前が来いと言ったんだからな、そりゃあ行くだろ」
『超キンチョーした、変じゃなかった？』
「あぁ、とても綺麗だったな」
元々優しい性格をしているもんだから、そういうことも真っ直ぐ隠さずに濁さずに教えてくれる。
恥ずかしいったらありゃしない……て、親友なんでそんなにニヤけてるのやめなさいこっちを見るな！！！
『炎司くんもうヒマ？回ろーよ！』
「あぁ、行こう。
どこか気になる場所はあったか？」
『軽音楽部のステージと、アスレチックタイムアタック、それにご飯どころかな！』
「奇遇だな、アスレチックは3年B組の奴だろ？俺も気になってたんだ」
『じゃどっちが早いか勝負しよ！タイムアタックだし！』
「負ける気がせんな」
『なんだと！！！コス着ちゃうよ！？』
クラスの方は任せて、と言って貰えたお陰で、念願の炎司くんと文化祭を回るってことを今実際に出来ている。感動してきちゃった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 58人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：HAL | 作成日時：2023年12月29日 7時
