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『あれ、車?』
千堂「ん、」
『お酒いいの?』
てっきりシャンパンかワインかを飲むのかと思っていたから、それを許さない交通手段に驚き声をかけた。
千堂「まあ、考えてあるから気にしないで」
『そう言うなら。』
彼の後ろを歩くようにして、目当てのお店に入った。
あまりプライベートで食事をしに来るような場所でない雰囲気のお店は、いつもと違う緊張を得るには十分だ。
千堂「付き合ってからもう10年か」
『だね、長いようで短かった気がする』
コース料理を待ちながら懐かしい思い出話に花を咲かせる。
なんだかソワソワしている様子の彼に不思議な感覚こそあったものの、気のせいだと言い聞かせて運ばれてきた料理を口にする。
『そいえば、もうちょっとで自分のお店持てるんだっけ?』
千堂「うん、そう。もうちょっと!」
『そっか、楽しみだね!』
彼はずっと昔から言っていた美容師になる、という目標に向かって走り続けている。
高校卒業後は専門学校へ通い、現在は美容師見習いとして今の美容室に務めているのだがもう少しで一人前、つまり自分のお店も持てるのだそう。
千堂「なぁ、A。」
『なあに』
1口サイズにカットしたお肉を口に運ぶ直前、真剣な声色の彼に名前を呼ばれて顔をしっかり見ることにした。
千堂「ふは、食ってからでいーよ」
『ん、では遠慮なく』
千堂「ン」
咀嚼して次にどんなことを言われるのかと緊張しながら飲み込んだ、うん。心の準備ができたし、もう何を言われても大丈夫。
『ところで、何だったのでしょう』
千堂「もーいいの?」
『いいよ』
目を細めながら微笑んで、彼はポケットから小箱を取り出した。
千堂「本当は食い終わったあとに言おうと思ったんだけどさ、ダメだわ。可愛すぎるんだ。
A、俺と結婚してほしい。」
『あら』
驚きで思わず口元をおさえて、けどそろそろかな?何て話していた分、思っていたよりもオーバーなリアクションとかはできなくて。
千堂「これから先も、俺が命を懸けてAの事を守るよ。
だから、この指輪をはめさせてほしい。」
今更そんなキザなセリフなんて聞かないな、恥ずかしくてそうやって照れ隠しをした。
でもしっかりと彼の目の前に左手を差し出した。
『っと、こんな私でいいのなら、ぜひ。』
不思議な話なんだけど、貴方と一緒にいればもう何も怖くないの。
あっくんが隣で、私のそばにいて笑ってくれているだけで、最強になった気持ちになれるんだ。
『敦、愛してる』
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晴(プロフ) - ぼほほさん» たくさんのコメントありがとうございます〜!!あっくんはきっと一途で真っ直ぐな男の子なのでこんな結末になってごめんの気持ちですがそう言って貰えて嬉しいです!!!!ありがとうございます!!!!!!! (11月15日 22時) (レス) id: dd7884e58b (このIDを非表示/違反報告)
ぼほほ(プロフ) - (続きです)文章の間隔とかが私的に読みやすい間隔でぐんぐん読めました!これからも頑張ってください! (11月15日 15時) (レス) id: 8104d71460 (このIDを非表示/違反報告)
ぼほほ(プロフ) - はじめまして!今まで陰ながら応援していました。『実らない恋』お疲れ様です。最高でした…。敦くんとの夢小説は初めて読みましたが、ハマってしまいました………HALさんの一途な敦くん完全に惚れました😭(長くて入らないので次行きます) (11月15日 15時) (レス) @page49 id: 8104d71460 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:HAL | 作成日時:2023年10月17日 4時