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それから彼女の目が覚めたのはおよそ丸一日後のことだった。
目が覚めるなり彼女はもう全てを悟ったような表情で、そんな表情にまた胸が締め付けられる。
『……そっか』
医者から流産を告げられた彼女は、ただ一言そうやって呟いて、俯いた。
けれど自分の庇った子どもが無事だったことを知ると、嬉しそうに微笑むんだ。
千堂「側にいてやれなくてごめん」
『何言ってるの、敦のせいじゃないよ。』
千堂「俺が守るって、約束したのに」
『じゃあ、こうしよ!!
敦とお腹にいた子が守ってくれたから、私は今も生きてる。』
俺は少なからずAの守った子供やその親に対して負の感情が募っていた。
けれど彼女は、それすらもお見通しだと言うように真っ直ぐな瞳で俺のことを見ながらそう言った。
『もしかしたらまだまだ働けー!ってことなのかもね。私も、敦も』
千堂「そう…なの、かもな!」
だからそんな顔しないで。と、そんな風に想っている言葉が聞こえてくる気がした。
無理やりにでも口角を上げてみれば、愛しい人が目の前にいる状況で、その彼女が無事だった今に笑えてきた。
千堂「Aが無事で良かったよ」
『何年ぶりだろうねぇ、こんなにガーゼ貼ってあるの』
千堂「これ以降は見たくないからな」
『知ってる』
でも10年以上前は敦の方が傷だらけだったと言われては、ぐうの音も出ない。昔はヤンチャばかりしていたけれど、今はハッキリと自分の守りたいものがあるのだ。
この歳になってみれば、あんなバカはもう中々出来ないだろう。
とっても良い思い出だ。
それから俺とAは、子どもが出来たその事を忘れるように仕事に明け暮れた。
毎日毎日朝から晩まで働いて、とにかく金を稼いだ。
何かが起こったときに、どうにかしようと思ったときにまずはじめに気にしなくてはいけないのが、どうしても金になるからだ。
でも逆に、自分たち2人やまた新しく命を授かったとき、十分過ぎるぐらいの金があれば大抵のことはなんとかなる。
そのぐらいの感覚で、やり甲斐もきちんと持ちながら働いていた。
時折、彼女が経営を任されている店舗に足を運んだり、逆に俺の経営している美容室にAが来てリラックスしていったり、ともうこれから先は少なくなってしまうかもしれない2人の時間を満喫していた。
『敦、今度水族館行かない?』
千堂「おー、いいな。休みとれそうな日ある?」
恋人だった頃の自分たちと変わらない気持ちのまま、2人で出掛けたりもした。
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晴(プロフ) - ぼほほさん» たくさんのコメントありがとうございます〜!!あっくんはきっと一途で真っ直ぐな男の子なのでこんな結末になってごめんの気持ちですがそう言って貰えて嬉しいです!!!!ありがとうございます!!!!!!! (11月15日 22時) (レス) id: dd7884e58b (このIDを非表示/違反報告)
ぼほほ(プロフ) - (続きです)文章の間隔とかが私的に読みやすい間隔でぐんぐん読めました!これからも頑張ってください! (11月15日 15時) (レス) id: 8104d71460 (このIDを非表示/違反報告)
ぼほほ(プロフ) - はじめまして!今まで陰ながら応援していました。『実らない恋』お疲れ様です。最高でした…。敦くんとの夢小説は初めて読みましたが、ハマってしまいました………HALさんの一途な敦くん完全に惚れました😭(長くて入らないので次行きます) (11月15日 15時) (レス) @page49 id: 8104d71460 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:HAL | 作成日時:2023年10月17日 4時