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千堂 side
今日はどうしても外せない仕事が入ってしまった。
最近軌道に乗った自分のお店なのだが、定休日前にどうしても打ち合わせがしたいと言われ、ちょうどそれが今終わった。
今日来た客の中に面倒なのがいたし、嫁の定期検診にも着いていけないし、全く今日はツイていない。
そしてそんな疲弊した心に、さらに追い打ちをかけるような着信が入った。
「千堂Aさんが重体です、急いで病院まで来て下さい」
と。
俺は自分の耳を疑った。だって、あの病院の周りは治安も良いし家から通いやすい範囲の場所だ。
万が一、いや億が一にもそんなことが起こらないように気を回していたのに。
「(俺が命を懸けて守ると誓ったのに)」
また、失敗してしまったのだ。
千堂「Aッ…!!!」
周りの人の制止なんてまるで耳に入らないまま、病院までの道を急いだ。仕事なんて二の次、病院内は走るなと注意されたがそれすらも耳に入っていないのだ。
"「大変、申し上げにくいのですが……」"
「なん、で……何でだよッ!!!
クソ…クソ野郎ッ、アイツが!!!!Aがなんかしたのかよ!?
なんでAばっかり、アイツばっかり傷つかないといけねえんだよ、それは俺じゃ…ダメなのかよ」
妊婦だったということもあり、彼女には個室が与えられた。
そして、彼女が庇ったという子供に大した怪我はなく、その子の両親が頭を下げに来た。
俺は、上手く話せていただろうか。
"「大変申し上げにくいのですが、お腹の子はもう……」"
流産、とはちょっと違ぇのかな。細かいのはよく分かんないけど、もうその腹の中に俺と彼女の間にできた可愛い可愛い子供はいないらしい。
事故が発生した当時のこと。
車通りのある車道にボールが飛び出して、それを追いかけた子供がいたそうだ。Aはそれを庇うようにして車と子どもの間に飛び出た。
今生きてる子どもが死んじゃうかもしれないのはとっても辛いが、それはこれから産まれてくるはずだった我が子を犠牲にしてでもしなきゃいけなかったことなのか?
そんなクソみたいなことを考える自分が嫌で、病室の隅で彼女の手を握りとにかく目が覚めるよう祈っていた。
直感的な印象ではあるものの、彼女によるとAと子供に突っ込んだ車は2人にぶつかる直前に速度をあげた可能性があるらしかった。
監視カメラなんてものは無く運転手は死亡し、その真偽を知る者はもうこの世には居ない。
千堂「A、愛してる。だから起きてくれよ…」
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晴(プロフ) - ぼほほさん» たくさんのコメントありがとうございます〜!!あっくんはきっと一途で真っ直ぐな男の子なのでこんな結末になってごめんの気持ちですがそう言って貰えて嬉しいです!!!!ありがとうございます!!!!!!! (11月15日 22時) (レス) id: dd7884e58b (このIDを非表示/違反報告)
ぼほほ(プロフ) - (続きです)文章の間隔とかが私的に読みやすい間隔でぐんぐん読めました!これからも頑張ってください! (11月15日 15時) (レス) id: 8104d71460 (このIDを非表示/違反報告)
ぼほほ(プロフ) - はじめまして!今まで陰ながら応援していました。『実らない恋』お疲れ様です。最高でした…。敦くんとの夢小説は初めて読みましたが、ハマってしまいました………HALさんの一途な敦くん完全に惚れました😭(長くて入らないので次行きます) (11月15日 15時) (レス) @page49 id: 8104d71460 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:HAL | 作成日時:2023年10月17日 4時