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定期検診も順調なある日のことだった。
うっすらと周りの人も気付き始める妊娠中期に差し掛かるころ、なんとなくではあるけれど私のお腹も膨らみはじめていた。
『今日は散歩しながら行こう』
つわりがかなり酷かった私は、敦から車の運転を禁止されていた。
私自身、もう体調がいきなり悪くなることは少なくなっているし、その予兆だってなんとなく感じ取れる。要は慣れたのだ。
けど彼はそんな私の言葉なんてまるで聞きもせず、有無を言わさない真っ直ぐな目で全てを否定した。
なんだか悲しい気持ちになってしまったけれど、それでも敦が私のことやお腹の中にいる子どものことを1番に考えているのが分かっているからこそ、私はそれに従う。
「うん、今日も特に異常はナシ。
この感じならもうすぐ性別の判別も出来そうだね、次は2週間後の週で都合の良い日にパパさん連れて一緒に来てくださいね」
『は、はい…!』
次の定期検診で性別が分かるって言われて、つい気が抜けていたんだと思う。
そういう時に限って、普段はしないことをしたくなるもんだ。
帰りもたくさん寄り道して帰ろう!だなんて意気込んで、病院の近くにある公園にいた。
そこは広い公園で住宅街に面しているけれど、公園の敷地のうち一辺は車の往来が多い道に面していた。
子ども連れのお母さんたちや、保育園の散歩コースなんかにもなっているらしくて、小さな子どもたちの声で賑わっていた。
ここは遊具も充実していて、私もこの子が産まれたら初めてのおでかけはここにしようと思っていたぐらい。
『よし、そろそろ帰ろ』
ベンチに座って飲んでいた紙パックの牛乳を畳んだ。
私の通っている病院に設置してある自販機には、不思議なことに紙パックの牛乳があるのだ。
妊娠しているときには牛乳を飲むのもアリだと聞いてからは、検診後に必ず買って飲むようにしていた。
紙パックを公園に設置してあるゴミ箱へ捨てて一歩公園の外へ出たとき、視界の隅からボールが転がってきた。
そのボールはコロコロと転がり車道へと飛び出す。
「ああっ、ボール!」
『あっ、危ない!!!』
そして、まるでお約束かのように飛び出してくる子どもの姿。
向こうからはボールの方へ真っ直ぐ車が来ている。
体が走り出し子どもを庇うように抱え、そのまま目を思い切り閉じたのだ。
最後に見えたのは目の前まで迫ったコンクリートの地面。
一瞬何が起こったのかも分からない衝撃、浮遊感。
そして次の瞬間、私の妊娠を知らせるストラップは血にまみれた。
『(あ、れ……なんで車加速したんだろ……)』
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晴(プロフ) - ぼほほさん» たくさんのコメントありがとうございます〜!!あっくんはきっと一途で真っ直ぐな男の子なのでこんな結末になってごめんの気持ちですがそう言って貰えて嬉しいです!!!!ありがとうございます!!!!!!! (11月15日 22時) (レス) id: dd7884e58b (このIDを非表示/違反報告)
ぼほほ(プロフ) - (続きです)文章の間隔とかが私的に読みやすい間隔でぐんぐん読めました!これからも頑張ってください! (11月15日 15時) (レス) id: 8104d71460 (このIDを非表示/違反報告)
ぼほほ(プロフ) - はじめまして!今まで陰ながら応援していました。『実らない恋』お疲れ様です。最高でした…。敦くんとの夢小説は初めて読みましたが、ハマってしまいました………HALさんの一途な敦くん完全に惚れました😭(長くて入らないので次行きます) (11月15日 15時) (レス) @page49 id: 8104d71460 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:HAL | 作成日時:2023年10月17日 4時