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時間の流れというものは残酷で、私はいつもいつも仕事に追われていた。
別にそれが嫌とか言いたい訳では無いんだ。
仕事をたくさん貰えるのは有難いことだし、それ以上に彼から信頼を置かれているのだと思うと自分への自信に繋がるから。
『でもさすがに仕事量が多いです……』
柴「今日は早めにあがりたいんだったか?」
『はい、家で人が待ってるので。』
柴「……そうか、ならこれだけ済ませて帰れ」
けど、元黒龍の総長として恐れられている彼を見ていた時とはまるで違う様子の彼にまた暖かい気持ちが溢れてくる。
『いつもいつもありがとうございます』
柴「気にするな。
それに、そろそろ結婚も近いと言っていただろう、欲しいものがあったら早めに伝えろ。」
柴くんは些細な会話の内容も漏らすことなく覚えていて、それは時々こちらが言ったのかどうを忘れかけてしまった様子に気づいては何時に言っていたぞ、なんて言う。
『時間本気でやば、急ぎますねっ』
腕時計を確認しながら、今日もビル街を走り抜ける。
はじめの頃はパンプスでろくに走った経験もない私には靴擦れが痛くて苦戦していたけれど、今では都会のど真ん中のビル街を元気に走り回れるようになった。
まあでもこれをすると周りの人たちからははしゃぐなと怒られるけどね。
っと、いけない。話が脱線するところだった。
仕事を早く上がってでも向かいたい今日の予定のこと、実は今日はディナーに行こうと誘われていたのだ。
もう付き合ってからは10年ぐらいの年月が経った。
敦と付き合っているという実感は未だに湧かないけれど、手を繋いだりキスをしたり、その先だってしているし、家では同じベッドに寝ている。
していることは明らかに恋人や家族のような深い関係のソレなのだ。
『もしもし、仕事早めに切り上げさせてくれたよ』
"「そう?じゃあ時間もたっぷりあるし、ゆっくりオシャレ出来るな!」"
『もしかして、今日のコーディネートは敦がしてくれるの?』
"「当たり前だろ?
好きな人を自分の手で可愛くできる機会があるとしたら、絶対に逃したくないもん、オレ。」"
電話越しに感じる少しのあざとさが癖になってしまいそう。
『そっか、嬉しいな。
じゃあ急いで帰るからもう少しだけ待っててね』
彼がそれに応えたことを確認して、通話の終了ボタンを押した。
家から職場までは、電車を乗り継いで時間にすると約40分ほど。結構遠いこの距離を移動するのに必須なのがそう、イヤホン。
今日もまた、いつものようにプレイリストから音楽を聴くのだ。
その時に流れていたのは日常が有難い、みたいなそんな歌だったと思う。
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晴(プロフ) - ぼほほさん» たくさんのコメントありがとうございます〜!!あっくんはきっと一途で真っ直ぐな男の子なのでこんな結末になってごめんの気持ちですがそう言って貰えて嬉しいです!!!!ありがとうございます!!!!!!! (11月15日 22時) (レス) id: dd7884e58b (このIDを非表示/違反報告)
ぼほほ(プロフ) - (続きです)文章の間隔とかが私的に読みやすい間隔でぐんぐん読めました!これからも頑張ってください! (11月15日 15時) (レス) id: 8104d71460 (このIDを非表示/違反報告)
ぼほほ(プロフ) - はじめまして!今まで陰ながら応援していました。『実らない恋』お疲れ様です。最高でした…。敦くんとの夢小説は初めて読みましたが、ハマってしまいました………HALさんの一途な敦くん完全に惚れました😭(長くて入らないので次行きます) (11月15日 15時) (レス) @page49 id: 8104d71460 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:HAL | 作成日時:2023年10月17日 4時