実らない恋 4 (ページ39)

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屋上へ来たときとはまた違い、手を繋いで帰ることに。
まだ慣れないその温もりが、変な感じだ。

千堂「…………オレ、幸せだ」

『良かった！』

千堂「でも、まずはテスト頑張らねえとな〜」

そう言ってまたすぐ次に来る行事に目を向けて、嫌だな〜！なんて笑って言ってる。
どうせほとんど勉強なんてしないくせに、テストで低い点を取るわけにゃいかんと言うのがまた面白かった。

『私も勉強頑張らなきゃ、大学行きたいし！』

千堂「Aは大学なの？そっか。」

『うん、そのつもりだけど……あっくんは？』

千堂「んー、俺はやっぱ専門かな。美容系の勉強したくて」

学校からの帰り道、特に誰と会うことも無く二人並んで家路をたどっていた。

文化祭という一大イベントも終わって、それから二週間もすれば定期テストがやってくる。

彼も彼できちんと進路のことを考えているようで、なんだかビックリしてしまった。
驚いていたらまたそれはそれで何だよ、とデコを小突かれてしまうのだが。

こんなふうに大事に想われて、すぐ近くに落ちていた幸せを拾わなかった私はかなりのバカなのだと思う。

『ありがとうね、あっくん。』

携帯の番号をひとつ消した、だってもう会わないと決めたから。

千堂「んーん、気にすんなよ。
じゃあまた、学校でな。連絡するわ」

『待ってる。』

あともうひとつだけ、これだけは絶対に自分からさよならしなくちゃいけないと思うから。

ゴクリ、唾をのみ込んで玄関扉に手をかける。

きっと今日もいつものように"おかえり"という優しい言葉が聞こえてくるはずだから。

もうひとつのこの連絡先を失くすために、彼の気持ちを大切にするために勇気を振り絞るのだ。

『……ただいま。』

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結局、私があっくんと付き合ったあの日から修二くんの姿を見なくなった。

なんの前触れもなく居なくなったりするところは相変わらずだけど、きちんと話さなくてはと思っていた手前どうすることも出来ず、ただ無力感だけが募っていった。

そして私は、いや、私たちは今日高校を卒業する。

千堂「A、帰ろーぜ！」

『今日はちょっとね、行かなきゃいけないところあるから途中まで！！！』

千堂「行かなきゃいけない所？」

『うん、雇い主の所まで』

彼と付き合った当時からは想像すらできないほどに、穏やかで、とっても幸せな日々を過ごしていた。