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『は、なして……』
「なぁAちゃん。本気で俺と一緒に来る気、無い？」
壁と背中がくっついたように動かなくて、自分の持っている魅力を最大限に活かして耳元でそんなことを言ってくる。
『ない、です………私もう貴方とは関わんないって、決めてたのに』
「何で？」
『みんなが、悲しむから』
「へぇ、」
耳元から顔が離れたと思ったら、少しばかり首を傾け私をまた見下ろす。
真っ直ぐ視線が交差して、逸らしたいのに吸い込まれそうな瞳に捕らえられたようになって、顔を背けることができない。
「みんな、なの？半間だけじゃなくて？」
『修二くんは……悲しまないです』
「何で？それはAちゃんには分からなくね？」
『わ、かる。』
自分で言ってて虚しくなる。
修二くんは、私のことをとっても大切にしてくれるけど、やっぱりその一番は私じゃないという事が分かるから。
私のことなんてまるでお構い無しに、自分の思い通りに行ったり来たりしているのよ。
都合のいいヒトになっているのは分かっている、けど。
「Aちゃんってさ、何で俺と会うとき会うときいっつも可愛いんだろうな？」
『……は？』
「無防備なんだよ、沢山肌も出てるし。」
『な、ちょっ……やだ、ってば…！！！』
ｷﾞﾘ、音がしそうなほど手首を強く掴まれて生理的な涙が溢れそうになってくる。
けれど、泣いたらまたあの時のように…そんな考えが過ぎって口を固く結ぶ。
「ハハ、さぁいこ〜」
『い"、たいッ…』
「泣いて喚いても誰も助けに来てはくんねえぞ？」
『離して、ください！』
「おーおー、もっと力入れねえと。
相変わらず弱っちいな〜Aちゃんは」
『も、やだ……やなの、たすけて』
何でこんな日に、こんな思いをしなくてはいけないんだよ。
あたしが、貴方に何をしたの？
『たけみち、助けてっ』
「あ"？」
初めて、口にした本当の気持ち。
どんどん力の入る彼の腕、痛みと恐怖の他には何も考えられなくて、目の前の彼が見たこともないぐらいに怒っていることにだって気付かないぐらいだった。
「ここか！？！」
タイミングが良いのか悪いのか、まさに今私が助けを求めていたタケミチが教室の扉を思い切り開けた。
『た、け……みち』
「ﾁｯ」
花垣「……A、知り合い？」
「はぁ、冷めた。じゃまたなAちゃん。」
『……』
ボロボロ涙を流す私に視線を配り、武道が来たのとは反対側の扉から出ていく蘭さんを見送ったあと私の傍に寄ってきた。
花垣「A、大丈夫だった？」
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作者名：HAL | 作成日時：2023年7月8日 22時
