実らない恋 4 (ページ31)

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『……んっ、』

ここで姫は長い長い眠りから覚めて、王子を目にする。

『あな、たは…？』

松野「俺は西の国の王子です、どうかあなたに婚約を申し込みたい。」

『ふふ、不思議な人ね。まだお互いのことを何も知らないというのに。』

舞台上から客席に体を向け、覚えたセリフを言った。

『……(あ、)』

見知った人物を発見し、ちょっと体が強ばり緊張してきた。

松野「ええ、確かに貴方の言う通りだ。
しかし確信している、貴方となら素晴らしい未来を歩めるとね。」

『面白い人だわ、そういう殿方は好きよ。』

松野「それでは、西の国へ一緒に参りましょう！」

跪いて手を差し出す。演出家曰く、これがプロポーズの合図だという。

『えぇ、こちらこそ。』

ここで左右から幕が閉じていき、舞台転換だ。

急げ、ナレーションが時間を稼いでいるうちに早着替えをしてウエディングドレスを模したワンピースに着替えるんだ！

『できたっ！』

なるべく小さな声で周りに届くように伝える。

するとナレーションがいい感じに終わって舞台の上手から私、下手から千冬が真ん中に向かって歩んでいく。

背景はみんなが頑張って描いてくれたお城の内装、本当に結婚式の主役になったみたい。

「白雪、貴方は王子と夫とし、病める時も健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛を誓い夫を想い、夫のみに寄り添うことを神聖な婚約の元に誓いますか？」

『はい、誓います。』

「王子、貴方は白雪と妻とし、病める時も健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛を誓い妻を想い、妻のみに寄り添うことを神聖な婚約の元に誓いますか？」

松野「…誓います。」

「それでは、誓いのキスを。」

キス、なんて言葉に観客がどよめくのが分かった。

本当にしたんだっていいからね、とは言ってある。けど、千冬は上手くキスをしている風を装うのが上手かった。

『……』

松野「……目、開けていいぞ」

コソっと言うのが面白くて、思わず笑いそうになってしまった。どうかお客さんたちにはバレていませんように。

それから出演した人達が並び挨拶をした、みんなでお辞儀をして幕が閉まって、舞台は大成功だったと言えるだろう。

『最初に比べたら、ホントに千冬演技上手くなったね！』

松野「まあな！練習したし、ホント頑張ったよ」

『おつかれ。この後は？』

松野「んー、とりあえず他んとこ回るけど、Aはあっくん達と回るだろ〜？
俺も一緒に行っていい？」

『いや聞かなくてもいいよ、来なよ』

そうして私たちのクラスは解散し、私たちは友人の元へと向かった。