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「小道具運び終わってるー?」

「もうこっちは準備万端、今衣装着てもらってるとこ!」



『ふぅ、緊張しちゃう。』

いっぱいセリフや演技の練習をして、千冬をはじめクラスメイトにはたくさん練習に付き合ってもらった。

演劇っていうのは、台本を書いてくれる人がいたり、こうやって衣装を作ってくれる人がいて、私のかじるリンゴみたいな小道具や他の大道具を作ってくれるみんながいる。

1人だけの力じゃあ絶対に作り上げられないもの、こういうのは結構好きだったりする。



ブーーーーーー

「それでは只今より1年__組の演劇を始めます。」

左右に幕が開いて、幕が完全に開いたのを確認してからナレーションが始まる。

そして、そのナレーションに沿って物語は進み私たちも舞台へ出てそれぞれの演技をする。



『魔女様から貰ったリンゴ、きっとみずみずしくてとても美味しいんだわ』


リンゴは本物を使ってるから、本当にひと口だけかじる。

意外とこれが難しくて1週間ぐらい毎日リンゴ食べて練習していた。


『う"ッ…!?』


リアリティは求めすぎず、ファンタジー、でも倒れるとこは思い切って……よし行ける!

ドサリ



『(っ、痛ぅ………)』

思ったよりしっかり倒れ込んでしまったから腰を床に強打した、ここで呻き声を出さない私はとても偉い

そしてここで舞台は暗転して次に明るくなったとき、私は棺に横たわる。


「あぁ、白雪姫……可哀想に。」

「どうしたら目を覚ましてくれるの?」

「毎日君の好きなお花を摘んでいるのに、」

「今日も姫は目を覚ましてくれないのね。」



"「小人たちは、毎日姫の棺を囲み涙を流していました。
来る日も来る日も白雪姫のそばに行き、彼女が目を覚ますのを待っていました。」"

"「ある日、森に迷い込んだ王子と出会ったのです。」"



松野「この女性は?」

「この方は白雪姫、毒リンゴを口にしてから目を覚まさないのです。」

松野「この棺……いや、彼女を貰い受けたい。
君たちの望むもの、何でも与えよう。」

「……しかし、白雪を失った私たちには欲しいものなど何もありません。」

松野「そうか、それでは仕方がない。

私はこんな綺麗な女性に初めて出会った。ぜひ彼女に婚約を申し込みたかったのだが、それももう遅いらしい。」





"「ここを去る前にひとつだけ、彼女に口付けをしても良いだろうか。」"


口付けという言葉が上から降ってきて、しないと分かっていても私の胸はドキリと鳴った。客席からは口元が見えないようになっているけれどフリだけは完璧に行った。

「起きろ、A。」

静まり返った体育館、私の名を呼ぶ控えめな声が聞こえてきた。

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作者名:HAL | 作成日時:2023年7月8日 22時

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