実らない恋 4 (ページ28)

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家に帰ってからただいまと言うとおかえり。と返事が来る生活にだいぶ慣れた。

まあ、毎日出迎えられたら否が応でも慣れると思うけどね。

「今日はAちゃんの作る生姜焼きが食いてえ気分」

『え！今日はお肉買ってきてないなあ、そしたら私ちょっと買いに行ってくるから待っててくれる？』

「なら明日でいいや、今日の晩メシは？」

『今日はね、鮭の西京焼きがメイン！和食の献立だよ』

今となっては同棲のような感じ、ずっと一緒にいることに慣れていたから家族も同然だ。てことは、どっちかというと恋人じゃなくてお兄ちゃんか。

お兄ちゃんとは、あんな事しないけどね。

『どーしたの。』

「Aちゃん、もうそろそろ文化祭とかの時期じゃね？」

『そうだけど……え、来ないでよね。』

「わざわざ自分の顔晒しに行ったりしねえよ、俺は俺でAちゃん独り占め出来ンだから。」

『……ん、ありがと。』

何気ない、普通の会話。
今日は学校でこんな事があったとか、テストがどうだったとか、本当に家族で話すようなことばかり話すの。

修二くんはあまり表立った行動が出来ないから、私がその分たくさん外に出ている。買い物とかそう、色々。

さっき修二くんが言ってたけど、私の高校ももうすぐで文化祭がある。

私の所属しているクラスでは、無難なところを選んで演劇をやることになった。なんと私は、クラスメイトの推薦のおかげで抜擢されてしまったのだ、メインヒロインに。

正直気が重い、私がメインヒロインの役をやるなら仲が良いからという理由で千冬は主役。

劇の内容は白雪姫、そうしたら配役も簡単だからとスイスイ先に先に決まっていってしまった。

白雪姫といったら、王子様の目覚めのキス。

高校生の考えることなんて所詮そんなもん、フリでいいよとは言われたものの、どうせ体で隠れて見えなくなるだろうし千冬がきっと上手くやってくれると信じてる。

『(あーあ、恥ずかしいな。演劇なんて誰も見にこなきゃいいのに。)』

私の通っている高校は演劇部が無いから、その分だけちょっと気が楽だったりする。

「考え事？」

『んー、ちょっとだけ。』

そんなことを考えると修二くんには直ぐにバレちゃうみたい。どうしてなんだろうと思って本人に聞いてみると、適当にはぐらかされる。

Aちゃんの騎士だからだよ、なんて言葉で丸め込まれてしまうけど、私はそれでも気分がいいのだ。

『修二くん、私文化祭の準備でこれから帰るの遅くなると思うから、ご飯食べたくなったら出前とか冷蔵庫とか、上手くやってね！』

それはもう、本当に心の深いところまで許してしまうほどに。