157 ページ17
翌日、私はホームルームが終わってすぐに目的の場所へ向かった。
約束の時間は18:00で今は16:30、まだ時間はたっぷりある。まずは腹ごしらえしよう、話している最中にお腹鳴っちゃったら恥ずかしいし
『(美味しそうなカップケーキ発見)』
目に入ったカップケーキに引き寄せられるようにお店に入って、暖かい紅茶と目当てのカップケーキを頼む。
時間の少し前までここで暇つぶししようと思っているのだ、佐野くんと一緒に食べたかったお菓子は買ってある。少しだけ残っている課題をしながら時間と相談、ちょうど良さそうな時間になったらお店を出る。
けど、思ってもいなかった。
呼ばれた場所がホテル街だなんて、しかも私制服。
最悪に最悪が重なってる、近くまで来たのは確かなのにどこのホテルかも分からないし……
白い目で見られながら立ち尽くしていると、後ろから肩を叩かれた。何となく見覚えがあって、マスクをしている髪の綺麗な美人さん。
『あ、え……?』
「お前三輪Aだよな」
『はい、そうです』
「ついてこい。」
中々動けずにいる私の腕を引っ張って、その辺で1番高そうなホテルへと進んで行った。美人さんは声からして男性かな、とも思ったけど驚くほど分からない。
「ここだ、マイキーが待ってる。」
腕を引かれるままに歩いていくと、VIPと書いてある札がぶら下がっている部屋の前にたどり着いた。
どうやらここに佐野くんがいるらしい。
「マイキーので下手なマネしたら殺すからな」
その美形には似合わない暴言の数々、この人だ九井さんの電話の奥で笑ってた人。
ノブに手をかけて中へと入った、空気は冷たくて重苦しい。
「マイキー、三輪Aを連れてきました。」
真ん中にある椅子に腰掛けている佐野くんは、以前と見た目こそ変わらないが目には隈があって、その瞳には光が宿っていなかった。
『佐野くん、お久しぶりです。』
「あぁ、久しぶりだな。」
『私近くの和菓子屋さんで佐野くんの好きそうなどら焼きを買ってきました、良ければいかがですか?』
わざと明るく振舞ってみれば佐野くんは以前の様にニコリと微笑んでくれるんじゃないかと思った、けど、そんなの夢のまた夢のようだ。
彼は変わらない表情でどちらもお前が食いな、と言った。
『話をしにきました、佐野くん。』
「あぁ、話せ。」
『エマのことです、佐野くんとはきちんと話せていなかった。』
エマ、その名前を出した途端にこの場の空気の緊張感の種類が変わった。少しでも下手なことを行ったら、死ぬんじゃないかと思った。
405人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:HAL | 作成日時:2023年7月8日 22時