実らない恋 4 (ページ16)

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"「Aはまた、前みたいにヒナちゃんと話したいんじゃねえの？」"

千冬が自分の家に帰ったあとも、アイツの言ったことを頭の中で反芻していた。

『確かに話したくないと言ったら嘘になりますが、今更なにをどう話せばいいのか私には分からん。』

ブツブツと思ってることを吐き出していると、昨日と同じような時間に携帯電話が鳴った。

昨日はこの時間にお風呂入ってたっけとか思いながら、携帯を取る。

『もしもし、三輪です』

「久しぶりだな、俺のこと覚えてる？」

この声、聞いた事あるかもしれない。

確か前も電話越しで、こんな話をしたような……？

『分かりません』

正直に答えると、向こうの方からは別の人の笑い声が聞こえてきた。なんか随分と楽しそう。

「まぁしょうがねえか、最後に会ったのも2年ぐらい前だもんな。」

『2年前？じゃあ尚更分からないですよ、どちらさまですか。』

「九井だ、九井一。」

『あー………あっ、九井さん！
実は私もちょうどお探ししていたところなんです！』

「知ってるよ、だから掛けた。」

『えっ、そなの。
あの、私佐野くんとお話がしたいんです、九井くんは佐野くんが今何をしてるか知ってますか？』

「あぁ、マイキーもお前に会いたいってさ」

『そうなんですか、？』

物事が上手く行きすぎているような、そんな感じがしてる。ちょっと怖い。

「嘘じゃねえよ。この電話切ったら、メールで位置情報を送る。
本当にマイキーに会いたいなら、明日の18:00にその場所に来い。」

『分かりました、行きます。』

「……引き返すんなら今だぞ」

『私が話したいことがあるので、大丈夫です。
九井さんもわざわざ連絡してくれてありがとうございます。』

どうやら、思っていたより簡単に佐野くんに会うことが出来そうだ。

この電話のことを他の人には言うな、という言葉を最後に電話が切れ、スグにメールが届く。位置情報として送られてきたのは、新宿にある施設の場所だった。

行ったことはないけど、近くまで行けば分かるはず。

『佐野くんと話したいこと、ちゃんと整理しておかないと。』

ベッドに入ってからはその事で頭がいっぱいだ。エマのことやどうしてみんなの事を遠ざけたのか、全部全部聞きたい。

彼は話したくないかもしれないけど、たくさん聞いて欲しいことがある。

『(私、やっぱり失恋しちゃいました。)』

また、昔みたいに聞いてください。
美味しいお菓子持っていくから、昔みたいにバブの後ろに乗せてください。

私の大好きな人たちと、笑っててください。