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そしてやってきた週末、あれよあれよという内に日々が過ぎ去っていった。
私と三井さんは高級フレンチレストランでコース料理を食べていた。
『……コース料理なんて初めてです』
「マジ？なんか悪ぃな」
『ちなみにドレスコードも初めてです』
「の割にはいいの着てんじゃねえか」
『父さんが前見繕ってくれたやつですこれ』
「湊さんはセンス良いもんな、似合ってる。」
変に緊張してしまって食事が喉を通らない。三井さんがいつもよりキラキラしているようで眩しい。きっとこれはなんかの錯視だと思う。
いやそうであってくれないと困るんだ。
『……………』
魚料理を食べ終えたあと、お口直しのソルベが運ばれてくるまでの間。食前酒のせいか否か、少しばかり酔っているような気がした。
お酒に酔っているのか雰囲気に酔っているのか、その理由は定かではない。
皿が下げられテーブルの上では三井さんの大きな手が私の手を弄ぶようにしている。
これはあんまり宜しいことでは無いのか、どうなんだ………もう、こういうことならもっとテーブルマナー学んでおけばよかった。
三井「なぁ、A。」
そういえば、三井さんたらすっかり私のことを名前で呼ぶのに慣れたようだ。
『はい、なんですか』
三井「今日、ホントは来てくれると思ってなかったんだけど。」
『え、』
そんな言葉に、私は思わず顔を上げた。
目を合わせるのも一苦労な今日の三井さん、髪の毛をセットしていて本当にかっこいい。この場にいる誰よりもカッコイイ。眩しい。
世界大会前に、伸ばしていた髪をバッサリ切ったから尚のこと。
三井「だって俺、仮にとは言え、お前に一回告白してるんだぜ？」
顔を上手く合わせられなかった。
指と指を絡めて、いわゆる恋人繋ぎのようにしてくるのが意地悪だ。
『それは………』
三井「あの時の返事、聞きたい。」
『………』
実を言うと、全くそういうことを想像していないわけではなかった。
もしかしたら……という思いはあったんだけど、本当にそれを言われてしまうと食事も喉を通らない。本気で。
ソルベの次の料理はお肉だし、今言いますかソレ。って言いたいぐらいだ。
もしかしてウェイターさんも気付いてるんだろうか、全然料理が運ばれてこない。
『………ディナーの後でもいいですか』
今の私には、これが精一杯。
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作者名：HAL | 作成日時：2023年6月2日 21時
