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「栄治、ハッキリ言う。
お前はこの先、日本代表として試合に出るのは難しい。」
試合を終えた私の父が病院に到着し、私は栄治の病室を後にした。
私はそのまま病院を出て、選手やスタッフが宿泊しているホテルへと戻った。父から言うまでは口の固い選手以外には一切情報を洩らすなと言われた。
『………』
私も、何を言う気にもなれなかったから、とにかく部屋で一人の時間が欲しかった。
宮城「A、沢北の……」
『ごめん、後で。』
桜木「Aサン、今日の試合、なんです……けど」
『ちょっと、今は聞けない、ごめんね』
流川「……」
ダメ、無理に笑顔を作ったら余計に周りを心配させちゃう。平気なフリが板についていない私のことだ、どうせ直ぐにバレる。
部屋にこもってベッドに蹲る、栄治のワガママで相部屋になったんだ。まだ栄治のいた証拠がある。
『………どぉしたらいいの、分かんないよ』
電話もひっきりなしに掛かってきている、その要件といったら大体"沢北栄治は大丈夫なのか"ということ。
日本の人たちだけじゃない、アメリカのチームメイトやチアの女の子たちからも連絡が来ていた。
『大丈夫なわけないじゃない…あれを見てたんなら、わかるでしょ。』
栄治の怪我はリハビリをしたら治るもの、それはそう。
けど、以前の……いや、昨日の栄治のようなプレーは多分もう見れない。
あんな見るからに酷い怪我だったんだ、栄治は出来たとしても、身体が付いてこない。
ｺﾝｺﾝ
「入んぞ」
そうして私の部屋に入ってきたのは三井さん。あえてみんなを避けていたというのに、この人だけはいつも無視無視で土足で踏み荒らしてくるのだ。
「沢北、どーだった。」
『……いま言わなきゃダメですか』
大きなダブルベッドの真ん中で、布団に丸まって三井さんと会話する。顔も出ていないから、三井さんじゃなかったとき恥ずかしいけど、たぶん三井さんだから問題ない。
「靭帯断裂か？」
『……そう』
「やっぱな、ンな感じがした。」
『なんで分かったんですか』
「俺もやってるからな、勘みたいなモンだ。」
『栄治、なおりますか？』
「ちゃんと段階を踏んで、ゆっくり治していったら大丈夫だ。」
ポン、と布団越しに手の感覚があった。
『三井さんみたいにグレない？』
「それはアイツ次第だろ」
『栄治のバスケ、見れなくなるのはいやだ。』
「だから大丈夫だって。」
『栄治の力になってね、三井さん。私じゃきっと頼りないから。』
「なわけあるか、アイツからしたらお前がいちばん頼もしいに決まってら。」
三井さんは、いつも私の一番欲しい言葉をくれる。
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作者名：HAL | 作成日時：2023年6月2日 21時
