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水戸「Aセンパイ!!」
『はぁい』
何度か寝て起きてを繰り返して今日は運命の陵南戦、勝ったチームがインターハイ出場だ。
赤木先輩は分かりやすくていい、なんて言っていたけど私は不安が多すぎて堪らない。
水戸「今日も上?」
『いや、今日は前半少し上で見るだけ、コートを広い視野でとらえたくて。
安西先生が居ないからずっと下にもいたいんだけどね、みんなも彩子もいるから大丈夫よ、信頼してるの』
高宮「ありゃ、美人マネ?どーしてここに?」
水戸「いーのいーの、ホラAサン隣おいで」
大楠「洋平ってよ……」
野間「……だよなぁ、オレもそう思う。」
『ん、洋平くんどーも!』
高宮「あ!ありゃあ晴子ちゃんたちじゃねえか!」
野間「おーいっ、晴子ちゃ〜ん!」
晴子「あ!洋平君たち!」
水戸「3人の分も席取っといたぜー!」
『晴子ちゃん隣においで!』
晴子「ハーイっ!!」
そうして私的最強の布陣が完成したころ、観客席には大きな大きな影が迫ってきていた。
バサッ
『旗?』
"炎の男"と描かれているのが見えた、手すりにくくりつけている。湘北プレイヤーの応援だろうけど、一体誰が?
『ぇ……、?』
目をこすって二度見三度見をしても私の目が映す光景は変わらない。
『(何で、あの人がいるの……)』グッ
選手がそろそろコールされて試合開始まで間もないっていうのに、震えが止まらなくなってきた。
視線はコートにあてられず、膝の上に置いた握りこぶしをずっと見ていた。
呼吸をするので精一杯。でも、それでも、何とか隣に座っている洋平くんの服の裾を掴んだ。
水戸「何、って……先輩?」
『……怖い』
水戸「………大丈夫じゃないよね、外出よう。」
彼は私の異変にスグに気付いて連れ出してくれた。
高宮「洋平?どこ行くんだよ」
水戸「ちょっと自販機、先輩場所分かんないっていうから一緒に行ってくるわ!」
気を利かせてそう伝えた洋平くんは、私の腕を掴みすぐに会場を出た。会場外の木陰になっている場所に腰かけ冷たい飲み物を私に手渡す。
『あり、がと……』
水戸「怖かったのは、後から入ってきた不良達だろ」
もうそこには疑問形なんて無くて、確信したように聞いてきた。
そして今の洋平くんには遠慮もない。
そんな姿が、怖かった。
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作者名:HAL | 作成日時:2023年2月3日 2時